ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2010.11.10]

岩田守弘の振付で圧巻の踊りをみせたルジマトフ

川井郁子、ファルフ・ルジマトフ『COLD SLEEP』
構成・演出:鈴木勝秀、振付:岩田守弘
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『COLD SLEEP』は、地球が滅亡した後の世界が設定されている。
種の保存のために処置されていたCOLD SLEEPからめざめた女性と、その子供かもしれない男が恋に陥り、やがて別れ、膨大な時間が過ぎ去る。人類は再び繁栄し、男は力を信じ、女は永遠の叡智を信じ激しく対立し、ドラマが展開する。ついに神の裁きがくだって、大洪水が起こり、男は羊水の中へと還っていく・・・といったコンセプトの物語。これをルジマトフのダンスと川井郁子のヴァイオリン演奏とパフォーマンス、高田みどりのパーカッションと二台の太鼓で描く。
全体をACT-1とACT-2に分け、目覚め、生命の始まり、恋愛/結婚/死別、嘆き、支配者、、闘争、天の裁きー大洪水、愛・永遠、エピローグなど15の断章をヴァイオリンとパーカッションの演奏で構成している。

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そしてそれはやはりルジマトフのダンスが圧巻。岩田守弘の振付でパーカッションとともに踊るACT-2の冒頭のソロが凄い。宇宙空間に散在するエネルギーを細身の一身に収斂するかのようなアブソリュートな存在感をみせて舞台空間に屹立した。
高田のパーカッションが宇宙の鼓動を表し、観客は、シャーマンのルジマトフに導かれて全存在と一体化し、ひとつの呼吸に身を委ねる。至高至福のひとときの到来だった。そしてまた、最後のホセ・リモン振付のルジマトフのソロは、未だ見ることのなかった愛と世界への限りない優しさをこめ、無限の孤独を歌うかのようでもあった。
ヴァイオリンと太鼓のような異なったジャンルとコラボレーションしながら、時空を超絶した表現をゆとりをもって創ることができるのは、おそらく今日ではルジマトフというダンサーを措いてはいないだろう。
川井はヴァイオリンを手にしたままルジマトフに抱き上げられるなど、演奏とパフォーマンスを上手くさばくのがたいへんだったのではないだろうか。高田を主体とするパーカッションがじつに見事だった。異次元をみはるかすかのような表現を創って、この作品のバックボーンのひとつだった。全体としては、ルジマトフのダンス、川井の演奏、岩田とリモンの振付、高田のパーカッションなどの魅力に支えられた舞台だった。
(2010年10月8日 新国立劇場 中劇場)

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撮影:(c)瀬戸秀美
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