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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2010.09.10]

さらりと優雅に、しなやかに踊ったシムキンのバジル

Vladimir Vasiliev“Don Quixote” The Tokyo Ballet
ウラジーミル・ワシーリエフ演出・振付『ドン・キホーテ』 東京バレエ団
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東京バレエ団の『ドン・キホーテ』は、ウラジーミル・ワシーリエフがゴールスキー版を基に同団のために振付けたもので、2001年の初演以来、再演を重ねている。
バジルとキトリは今回もダブルキャストで、昨年の〈世界バレエフェスティバル〉で大ブレイクしたアメリカン・バレエ・シアターのダニール・シムキンと産後の主役復帰となった小出領子と、何度か共演済みの高岸直樹と上野水香のペア。初顔合わせとなったシムキンと小出の2日目を観た。
シムキンは、昨年、〈世界バレエフェスティバル〉の開幕を飾る全幕特別プロとして上演された『ドン・キホーテ』にマリア・コチェトコワと客演し、続く〈バレエフェスティバル〉でも抜群のテクニックと豊かな表現力で一躍人気者となったダンサーである。男性舞踊手としては小柄なほうだが小出との釣り合いは良く、東京バレエ団とはこの演目で二度目の共演とあって、すっかり溶け込んでいた。

バジルがドン・キホーテのひげを剃り終わるのを待ち切れず、キトリが仕事の邪魔をしてしまうプロローグから、シムキンと小出の演技は息が合っていた。シムキンは随所で爽やかな旋風を巻き起こした。ひときわ高い跳躍と長い滞空時間、にもかかわらず驚くほど静かな着地、滑らかに続く回転など、超人的な技をこれ見よがしにではなく、さらりと優雅にやってのける。しなやかに背を反らしての演技や、ルルベでポーズを決めた時の伸びやかさ、動くにつれて柔らかく揺れる髪、愛くるしい笑顔も魅力を倍増させた。勢い良く飛び込んでくる小出を受け止め、片手で高々とリフトするなど、サポートも慣れていた。陽気で快活で茶目っ気たっぷりのバジルを演じたが、演じるのが楽しくてたまらないという様子。今は若さが先に立っているが、今後どうニュアンスを加味していくか、見守りたい。
小出は精緻なテクニックの持ち主で、今回も持ち前の端整な踊りを披露した。勢いのあるジャンプ、コントロールの良い回転など、一つ一つの動きを音楽に合わせてきれいに繋いでいく。グラン・フェッテはシングルでも、安定感と気魄を感じさせた。少々勝気で芯のあるキトリという役作りで、シムキン相手に少しも臆することなく、むしろイタズラっぽさを打ち出すシムキンを抑えるようなところも感じさせた。

メルセデスの井脇幸江のツボを心得た晴れやかな踊りや、高木綾の意気込みを感じさせた若いジプシーの娘のソロ、典雅に舞ったドリアードの女王の奈良春夏、エスパーダを卒なく踊った後藤晴雄など、それぞれこなれた踊りをみせた。コミカルな演技をオーバーに見せて笑いを誘ったガマーシュの平野玲や、ひょうきんな役回りのサンチョ・パンサの高橋竜太の存在も忘れ難い。勇壮なジプシーの男性群舞は、粒ぞろいの男性ダンサーを擁するこのバレエ団ならではのものだった。
(2010年8月22日 ゆうぽうとホール)

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撮影:Kiyonori Hasegawa
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