ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐藤 円 text by Madoka Sato 
[2010.03.10]

踊る楽しさに溢れた「ヤング・バレエ・フェスティバル」

プティパ原振付 ナターリャ・ボリシャコワ、ワジム・グリャーエフ再振付『パキータ』
金田あゆ子 振付『完璧なお城』
リシーン原振付、D.ロング再振付『卒業舞踏会』
日本バレエ協会「ヤング・バレエ・フェスティバル

毎年恒例の日本バレエ協会によるヤング・バレエ・フェスティバル。クラシックの小作品、創作、卒業記念舞踏会という演目の構成で行われている。
今年の第一部は『パキータ』
導入部のお馴染みな曲で幕を開けた。カドリーユたちはシックな金色のチュチュで意気揚々と舞台に登場した。第一カドリーユ4名は黄色いチュチュ。カドリーユたちは身長にばらつきがあり少々気になったが、タイミングのよく揃った動きが統一感を生み出していた。
エトワールを務めるのは谷桃子バレエ団の三浦梢。白地に黒いレース飾りの衣装はもう少し華やかさがほしいと感じた。丁寧で清楚な踊りを披露した三浦は相手役の酒井大とも息が合っていて清潔なイメージだ。酒井はダイナミックで高さあるジャンプが若さを感じさせた。身のこなし方や表現も明るい作品によく溶け込んでいた。対する三浦はやや固くなっているようで大人しかったようだ。
パ・ド・トロワでは高橋真之、雨宮準、高橋静香がエンジとピンクの衣装を纏い愛ら
しい。3人とも小柄で動きもよく揃っていた。
女性ヴァリエーションでは軽部美喜野がひときわ目立っていた。ゆっくりとした
繊細な曲にピッタリな美しいつま先のラインを見せ、アームスの動きも滑らかで
あった。身体のラインも細くバランスが良いので、今後の活躍が期待される。

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『完璧なお城』
振付は金田あゆ子。テーマはクラシック作品『ジゼル』の主人公の気持ち。ジゼルはアルブレヒトに裏切られ命を落とし、精霊となっても愛を持って彼を助けるのだが、もし自分がジゼルの立場なら様々な葛藤や気持ちの変化がある、と言ったところであろうか。30名近い白いロマンチックチュチュの女性群舞と、橘るみ、森田真希、小原輝がソリストで登場した。
ソリストのダンスは温かみのある女性の優しさを表現しているようなパート、不安な気持ちやさみしさを感じるパート、激しく葛藤するようなパートに分かれていた。
具体的な表現ではなくかなり抽象的ではあったが、全員が白い泡のようなものを手のひらにのせて登場したときには幻想的な空間が生み出され、女性のもろくて危うい性格を見せられているようであった。

『卒業記念舞踏会』

毎回お馴染みの演目。ウィーンの寄宿女子学校の卒業生のための舞踏会の一夜が舞台。落ち着かない生徒たちと招待された士官学校の生徒、果てには学校長と老将軍の恋の駆け引きが面白い作品。音楽はシュトラウスの日本人にも耳慣れた楽曲で構成されている。飽きのこない完成された作品を踊ることは、若手ダンサーにとって良い体験になるのだろう。
今回の舞台は、全体的によくまとまっていた。出演者がみな演技部分と踊り部分の境目をあまり感じさせずに自然と役に成り切って楽しむ姿が印象的だった。
特に下級生を演じた鈴木久美子は快活な演技で観客にストーリーの展開を伝える役目を
うまく果たしていた。元々目立つ役だが、緩急に富んだ演技と、明るさのある踊りに好感がもてた。
また、コメディ色の強い作品中現れるシルフィードが、ひとときの幻想を見せてくれるのも面白い。金田あゆ子のシルフィードは繊細で美しく観客も出演者もすっかり魅了されていた。
フェッテ競争は少々ミスが目立ったが、そこはご愛嬌、仲間の応援を受けて最後まで回りきっていた。
特筆すべきは女学院校長を演じた大谷哲章の熟達した演技力であろう。生徒たちのまえでは威厳ある校長、老将軍のまえでは恋する乙女となって、観客の笑いを誘っていた。大谷と共演した若いダンサーたちが将来、彼のように演技力を持つダンサーに成長することを期待したい。
(2010年1月29日 ゆうぽうとホール)

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