ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐藤 円 text by Madoka Sato 
[2010.03.10]

楽しかったニジンスカ版『ラ・フィーユ・マル・ガルデ』

ブロニスラワ・ニジンスカ 振付、ブルース・マークス再振付『ラ・フィーユ・マル・ガルデ』
NBAバレエ団
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NBAバレエ団がニジンスカ版『ラ・フィーユ・マル・ガルデ』を上演した。音楽はヘルテル、演出・再振付はブルース・マークスである。
パウロ・フィメドロの衣装・舞台デザインで、ピンクやミントグリーンといったパステル調の色彩が舞台を明るく見せていた。女性の衣装にはチェック柄が使われ、エプロンには大きなリボンが着いている。他のバレエ団と味付けの異なる愛らしいデザインが印象的だ。
主人公リーズを演じたのは峰岸千晶。あえてオーバー気味に演技し、台詞を話しているかのような表現を見せた。ハッキリとした演技のためストーリーの展開が判りやすく、明るく茶目っ気のあるリーズの気持ちが客席まで伝わって来ていた。
相手役のコーラスを演じた秋山康臣は長い手足と細いラインが王子を思わせるが、素朴な村の青年役が意外に似合っていたようだ。リーズとの掛け合いでは少々強引に手をとるような仕草がいい。ひとたび踊りだすと常にリーズを優しく見つめていてコーラスそのものになりきっていたと感じた。
 

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第一幕、家の外でリーズの母シモーヌに見つからぬように踊るリーズとコーラスは、仲のいい恋人同士であることがすぐにわかるほど息がぴったりと踊っていた。村娘や青年たちといった周りの役どころも二人の仲を取り持っており、反対しているのはシモーヌだけである様がもどかしく感じる。富豪のトーマス、その息子アランとの婚約をとりつけ二人を踊らせようと必死のシモーヌの意に背いて、リーズはアランをからかい、また、アランもおどけて見せる。アラン役のキム・インキョンは軽やかな足取りで観客の心をとらえていた。
収穫祭ではシモーヌとトーマスも踊って見せてくれた。シモーヌを演じているのは男性のアレクサンドル・ミシューチン、背が高く大柄だが最後にはポワソンのリフトでポーズを決める。大胆ながらも終始恥じらいを見せ、コメディエンヌとして大活躍であった。
有名なリーズとコーラスのパ・ド・ドゥはこの場面で踊られる。アダジオは終始お互いを見つめあい息の合ったところをみせ、ヴァリエーションではそれぞれ安定したテクニックを披露した。特に秋元康臣のつま先まで神経の行き届いたバットリーは美しく繊細であった。コーダのマネージュも大いに観客を沸かせていた。

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第二幕はシモーヌとリーズの家の中でのやりとり。コーラスをこっそり家へ入れるためにリーズはあの手この手でシモーヌから家の鍵を奪おうとする。うとうとしだすシモーヌが絶妙のタイミングで覚醒し、リーズが慌ててごまかすといったやり取りが繰り返され、観客の笑いをとっていた。
村人が運び込んだ麦俵のなかにまぎれて家の中に忍び込んだコーラス。知らずに出かけるシモーヌ。一人くすぶっていたリーズはコーラスに気付かずに彼との将来を空想している。突然現れた彼に驚くが、二人きりの時間を楽しみ互いのスカーフを愛の誓いとして交換し合う。
結局は婚約を取り付けようと戻ってきたシモーヌ、トーマス、アランに見つかってしまい怒りをかってしまうふたり。トーマスとアランは立ち去ってしまいシモーヌはすっかり気落ちしてしまう。リーズとコーラスはシモーヌをなだめ、なんとか結婚を許してもらおうと声をかけ、最終的には許してもらいハッピーエンドとなる。最後まで乱れることなく踊りきった主演二人が見事だったのに加え、出演者全員が一つになって作品を作り上げている一体感が感じられる舞台で、NBAバレエ団の力量の高さを実感した。

近年アシュトン版とヘルテル版がよく踊られているが、バレエのテクニックを見せる部分と演技の部分がきちんとし分けられているのがヘルテル版で、今回のニジンスカ版はヘルテル版のアレンジだったように感じた。音楽や演出は異なるけれども農村を舞台に繰り広げられる権力に負けない愛の物語であること、コメディ・バレエであることがたくさんの版が演じられるこの作品の醍醐味であると改めて感じさせられた舞台だった。
また、同時にバレエ団芸術監督の安達哲治が振付けた『ラストコンサート』が、ショパンの生誕200周年を記念し上演された。ショパン「ピアノ協奏曲」第二番に合わせて彼が出会った3人の女性たちとの恋、すれ違いと晩年を描いた切ない作品であった。
(2010年2月20日 ゆうぽうとホール)

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撮影:鹿摩隆司
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