ニュ-ヨーク・シティ・バレエ団でプリンシパルとして踊った後、ディレクター、振付家として活躍してきたアンドレイ・プロコフスキーの演出・振付の『三銃士』は、牧阿佐美バレヱ団のレパートリーとして、しばしば上演されてきた。アレクサンドル・デュマ(大デュマ)原作の小説を、ジュゼッペ・ヴェルディの音楽を編曲して舞踊化している。プロコフスキーのバレエは、この他にも『アンナ・カレーニナ』や『ロメオとジュリエット』が日本のバレエ団のレパートリーとなっており、分かり易いシーン構成と説得力のある振付で親しまれている。
特にこの『三銃士』では、軽いユーモアのある戯画的な振付表現が、大活躍する男性ダンサーたちの魅力をいっそう引き立てている。
それにしてもダルタニヤンとポルトス、アトス、アラミスの三銃士、バッキンガム公爵さらにはロシュフォールを踊る、活きのいい5人の男性ダンサーを同じ訓練を重ねた同一のカンパニーがダブルでキャスティングすることは、なかなか難しいと思われる。激しい剣劇シーンが見せ場のひとつとなっており、ダンサー同士が楽しんでいるようにも見受けられたが、あのゆとりをみせながら迫力を感じさせる舞台は、急ごしらえのアンサンブルでは到底難しいだろう。
私が観た14日は、ダルタニヤン・逸見智彦、三銃士・中島哲也、宮内浩之、今勇也、バッキンガム・菊地研、ロシュフォール・塚田渉だったが、前日13日はダルタニヤン・森田健太郎、三銃士・清瀧千晴、篠宮佑一、京當侑一籠、そしてバッキンガムとロシュフォールは入れ替わっていた。やはりこの『三銃士』は、若手男性ダンサーがすくすくと育っている、牧阿佐美バレヱ団ならではのレパートリーなのである。
そしてこの演目は、ストーリーが全幕物にしては比較的シンプルだが、ダンスシーンの振付は、じっくりと組み立てられている。速いテンポで男性ダンサーたちがユーモアを交えながらダイナミックに踊るチャンバラシーンはもちろん、バッキンガム公爵殺害や女スパイのミレディやアンヌ王妃を巡るダンスも丁寧に構成されていて、じつに見応えがある。そのかわりというかバランス的にラストのダルタニヤンとコンスタンスの踊りは、グラン・パ・ド・ドゥの形式は踏襲せず、あっさりと小気味よくまとめている。逸見智彦のダルタニヤンと青山季可のコンスタンスは若々しく、余裕のある魅力的な踊り。時代劇にふさわしい優美さも兼ね備え、たっぷりと楽しめる舞台だった。
(2010年2月14日 新国立劇場 中劇場)