ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2009.01.13]

熊川哲也の贈り物〈舞曲~第1楽章~Ballet Music Journey〉

 音楽に特別なこだわりをみせるKバレエ カンパニーの芸術監督、熊川哲也が、名作バレエの音楽に焦点を当てたコンサート、〈舞曲~第1楽章~Ballet Music Journey〉を開催した。同カンパニーの公演でピットに入っているシアター・オーケストラ・トーキョーの演奏がメインだが、熊川の解説付きで、音楽に 応じて舞台両脇のスクリーンに写真が映し出されたり、ダンサーによる踊りが盛り込まれたりした。『ジゼル』の導入曲の演奏が始まり、舞台後方に配された オーケストラの音が、ピットからと違ってダイレクトに客席に届くのに驚いていると、脇から指揮者の井田勝大が登場し、指揮台の人と交代した。振っていたの は熊川で、指揮棒をマイクに持ち替え、台本片手にトークを始めた。

 1841年に初演された『ジゼル』を作曲したのはアダンだが、このバレエ音楽は、踊りを音楽の伴奏にせず、音楽が勝手な主張をせず、ドラマと結び つくことで真価を示す最初の例だと語り、音楽への興味を深めた。続いて“狂乱の場”などが演奏されたが、その演奏は実に雄弁にドラマを物語っていた。次に 取り上げたのはプロコフィエフ。『ジゼル』初演から一世紀を経て初演された『ロメオとジュリエット』と『シンデレラ』から数曲ずつが演奏された。だが、後 者にはほかにもっと特徴的な曲があると感じたことも手伝い、『ロメオ…』に絞ったほうが、バレエ音楽としての作品の魅力がよく伝わったのではと思った。
 

 第2部で、解説抜きで『若者と死』に使われたバッハの「パッサカリアとフーガ ハ短調」が熊川の踊るビデオと共に演奏された。熊川の迫真の演技や音楽と振りの絶妙な合致に感心したが、元々バレエ音楽ではなく、編曲されてもいるのだから、解説が必要だろう。
 

 次はチャイコフスキーの“3大バレエ。”『白鳥の湖』は演奏のみ。『眠れる森の美女』では妖精たちの踊りがオーケストラの前で披露された。リラの 精の松岡梨絵の端正な踊りが際立った。“ローズ・アダージョ”で、男性トップダンサーを求婚者にオーロラを踊った浅川紫織は、一つ一つの動きが丁寧で、片 足バランスも卒なくこなした。締めくくりは『くるみ割り人形』のフィナーレ。演奏だけなのは寂しかったが、音楽がいかに想像をかきたてるかが実感できた。 同時に、音楽なしで踊った時、ダンサーは体で音楽を奏でられるのだろうか、確かめたい気もした。「バレエ音楽の旅」という企画、色々な可能性がありそう だ。
(2008年12月21日、東京文化会館)