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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2008.09.10]

K バレエ カンパニーの熊川哲也版『海賊』の再演

『海賊』は、K バレエ カンパニーの2007-08シーズンを締めくくる公演であった。熊川はこの『海賊』初演の際に膝を傷め、主役として全公演を踊り切ることが出来なかっただ けに、このシーズンの『海賊』再演への思い入れも強かったに違いない。ところが、再び熊川哲也手術という衝撃的なニュースが走った。その直後の『海賊』公 演。

 設立以来10年を迎え、順風満帆にみえたK バレエ カンパニーに試練の時が訪れている。しかし、これはまた、外からの気楽な発言になってしまうが、長期的な視点から見て、日本にかつてなかった新しいバレエ・カンパニーを築くための天の配剤なのかもしれない。
というのは、直後の『海賊』公演では、吉田都を中心としたダンサーたちが結束して、全員でコンセントレーションを高めていることが、直接、肌で強く感じられたからである。
とりわけ、第2幕冒頭の奴隷から解放された喜びを踊る少女たちのパ・ド・トロワから、吉田=メドーラ、清水=コンラッド、遅沢=アリの有名なグラン・ パ・ド・トロワに至るまでは、熊川が抜けた大きな穴を全員で力を合わせて埋めようとする力感の漲った見事な踊りが連続した圧巻の舞台だった。
 

 音楽の上を歩いているかのような正確無比な動きに、繊細な表現力を兼ね備えた当代随一のバレエダンサー、吉田都が何と言っても素晴らしい。主役と しての華やかさのみならず、舞台の要となってシーン全体の動きをリードしている。吉田に呼応するかのように、松岡梨絵のグルナーラも哀しい美しさをしっか りと踊った。ビルバンド役の杜海がおもしろいキャラクターを見せていたのが目を惹いた。
清水健太、遅沢佑介、輪島拓也の男性陣も優れた結束力を感じさせる踊りだった。じつによくソリストの整ったカンパニーになった、と感心させられた。
「どれだけ身体つくりをして、どれだけリハーサルをしても、結局ダンサーを成長させてくれるのは、本番の一度の舞台なんです」という吉田都の言葉がずっしりと重みをもって感じられる『海賊』の公演だった。
(2008年8月1日、文京シビックホール)