ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2008.09.10]

18歳を迎えたキノコたちの『珍しいキノコ大図鑑』

「えっ、もう18歳! まだ10歳くらいだと思った」といいたくなる珍しいキノコ舞踊団の結成18周年を記念した公演は、『珍しいキノコ大図鑑』。あと2年待てば20歳だけど、「忘れないうちにやっておきます!」という「ザ・ベスト・オブ・珍しいキノコ舞踊団」である。
「電話かけた。あと、転んだ。」とか「牛乳が、飲みたい。」「あなたが『バレる』といったから」なんていう新鮮で可愛いタイトルに惹かれて、胸をときめか せながら公演に行った。公演の会場も原美術館の庭だったり、小粋なホテルのロビーだったり工夫が凝らされていたので、期待を膨らませることも多かった。

 絵本の中のような植物が茂り鳥が空を舞う、のどかな世界がシルエットで浮かび上がり、小鳥がさえずるなかで女性ダンサーが一人踊り始める。いろいろな珍しいキノコがにょきにょき生えているような楽しい世界が幕を開けた。
あまり激しい動きはないが、ダンサーたちは安定した動き。はっきりと自分の表現をソフィスティケートして踊っている。踊りながら子供の頃の思いでを話し たり、突然中断したりしながら、心はじつは全部思い出でできているのか、と思わせて観客と心を通い合わせていく、キノコ独特の方法が冴えている。音楽はバ ラード風の甘い声のボーカルが多かった。

 第1部の終りは、ダンサー全員が観客席に降りて踊りながら捌けたり、エンディングでもエンドレスにダンスを続けたり、18年の歴史が観客との強い 親和力を育ててきている。観客席で踊った時に、ライトを身体に着けていたダンサーが子持ちだそうだ。2人だったか3人だったか。
創設メンバーは、カンパニーの歴史が人生の半分の時間を占めるようになりつつある。設立当初は、可愛らしさと女性だけのダンスグループという珍しさで注 目を集めたが、18年のキャリアによって日本のダンスの一角を代表するカンパニーとなった。彼女たちの子供世代がダンスを始める日も近い。あるいは、もっ と珍しいキノコたちが誕生するかもしれない。
(2008年8月10日、ル テアトル銀座)