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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2008.08.11]

ルジマトフのすべて2008、新作『カルメン』ほか

 ファルフ・ルジマトフが2004年以来、しばしばコラボレーションを行っている、ロサリオとリカルドのロメロ姉弟と新作『カルメン』を披露した。
『カルメン』は、ローラン・プティやアルベルト・アロンソの振付によってバレエの傑作が創られている。どちらもカルメンに扮したジジ・ジャンメールとマ ヤ・プリセツカヤが鮮烈な印象を残して、世界的に有名な舞台となっている。ルジマトフは、「『カルメン』はホセの悲劇を描いたドラマ」だと思っているとい う。決して世渡り上手にはみえず、どこかに不器用さを感じさせるルジマトフには、ホセのキャラクターは合っているのかもしれない。
振付はリカルド・ロメロ。カルメン対ドン・ホセという対立に、バレエ対フラメンコという対立を加えた構図を作った。人物像をホセ=ルジマトフ、ミカエ ラ=マハリナはバレエのパで表し、カルメン=ロサリオ、エスカミーリョ=リカルドはフラメンコで描いて、コントラストを付ける、という試みと思われる。 コール・ドもバレエダンサーとフラメンコダンサーに分けている。そのほかに、デスマスクを着けた「死」が登場する。
バーの置かれたバレエ団の稽古場から始まって、赤い衣裳の豊満なカルメンの踊り、白い衣裳のエスカミーリョ、黒のホセなどの踊りがある。「死」が現れてもカルメンは怯まない。
そして最後は、ホセがカルメンをナイフで刺す有名なシーンとなる。さすが、ルジマトフの集中力は見事。人生のすべてを賭けて世界と対決するホセの心情がくっきりと浮かび上がった。

 ルジマトフは岩田守弘振付の『阿修羅』でも、心の深奥に秘めた激しい感情を端正な動きのラインの中に浮かび上がらせた。
イルギス・ガリムーリンは、モイセーエフ・バレエ団で踊ったニコライ・アンドローソフがギリシャの民族音楽を使って振付けたソロ『ゾルバ』を初演。ユリ ア・マハリナもロマノフスキー振付のソロ『シエスタ~Siesta~』(スペイン語で午睡の意)を、美しい身体を典雅に魅せて世界初演した。
エウゲーニヤ・オブラスツォーワとイーゴリ・コルプのマリインスキー・バレエ組は、『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』を涼風のごとく爽やかに踊った。 そのほかにもマリンスキー・バレエのヴィクトリア・クテポワと新国立劇場バレエのマレイン・トレウバエフの『海賊』のパ・ド・ドゥ、ロサリオとリカルド姉 弟の『メディア』、キエフ・バレエのソリスト、ヴィクトル・イシュクの『ゴパック』などが踊られ、2008年の「ルジマトフのすべて」は幕を閉じた。ルジ マトフはミハイロフスキー・バレエ団の芸術監督に就任して、既に活発に活動しているが、ダンサー、ルジマトフのこれからはどのような展開になっていくので あろうか。
(2008年7月3日、新宿文化センター)