ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2008.04.10]

森山開次『The Velvet Suite ヴェルヴェット・スウィート』

 暗黒の舞台。真紅の布が大きく円を描いている舞台中央に、上半身裸の森山が横たわっている。傷ついた獣、という設定。天から赤い花弁で作られた大きな球 体が吊るされ、目には感じられないくらいゆっくり、しかし確実に地に下りてきている。あるいは、獣の余命を告げているのだろうか。
啓示を受けたのか、獣が身体を振わす。髪を乱してのたうつ。下手から室屋光一郎がバイオリンが切ない生命を詠う曲を奏でる。獣は、激しく躍動し、真紅の布を身体に巻くなどしてバリアを超え、客席に彷徨い、咆哮する。
やがて無数の花弁が一気に舞い降りて、獣の身体を優しく包む。安らかな音楽が彼方から流れ、赤い花の球体は舞台の床に降りる。獣は息絶えて床に静かに横たわるが、一瞬、身体から絞り出すかのような呻きが発せられて幕となった。
生命と死、そしてエロスを凝縮した空間に閉じ込め、濃密な時間を森山自身がソロで踊った。音楽も森山のしなやかなムーヴメントを、様々に輝かし、強烈な色彩とも融合し、なかなか見応えのある舞台だった。
ヴェネチアビエンナーレ2007 ダンス部門[BODY & EROS]招聘作品として、初演された舞台の東京帰国公演である。ヴェネチアビエンナーレのダンス部門のディレクターは、かつて日本の舞台でも踊ったイズ マエル・イヴォで、彼の依頼によって創られた作品。ちなみに、ベルリンでイズマエルと打ち合わせした時に、森山が宿泊したホテルが「The Velvet」だったそうだ。
(3月1日、あうるすぽっと)