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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2008.04.10]

東京バレエ団『時節(とき)の色』『スプリング・アンド・フォール』

東京バレエ団が、ノイマイヤーの叙情性豊かな2作品を上演した。ドヴォルザークの弦楽セレナードによる『スプリング・アンド・フォール』(1991年) と、同団のために創作された『時節の色』(2000年)。これは、後者の初演時に組まれたのと同じプログラムである。2回公演の初日を観たが、再演を重ね ることの成果を実感させる舞台だった。

『スプリング・アンド・フォール』は、無音のままダンサーたちの動きをシルエットで見せる絵画的な冒頭からして美しい。音楽の緩急に合わせ、ソロやデュ オ、アンサンブルなども、伸びやかなポーズや躍動感あふれる動きなど、様々なシーンが連ねられていく。ソロパートを踊った後藤晴雄が緩やかな跳躍や回転を みせ、小出領子が淀みなく流麗に舞い、男性ダンサーが弾けるようにジャンプし、疾走するなど、動きで音楽を奏でているようにも感じられた。後藤と小出は デュオで相手への思いを滲ませ、情緒を添えていた。

「スプリング・アンド・フォール」「スプリング・アンド・フォール」「スプリング・アンド・フォール」
「時節の色」
『時節の色』は、ある男が四季の移ろいをたどる中に、男の心の四季をダブらせて描いた作品。主要キャストは初演時と同じで、旅する「男」は高岸直樹、男に 付きまとう「時」は木村和夫、「想い出」は斎藤友佳理。それぞれ役を深めたのだろう、3人の演技が緊密に絡み合い、ノイマイヤーのコンセプトの奥深さを際 立たせる、誠に感銘深い舞台となった。

舞台に置かれた4つの巨大な箱型オブジェが様々に並び替えられ、情景により背景の黒幕が水平に開いてのぞく空間の照明とともに、四季のシーンが幻想的に 演出された。オブジェの一つから「男」が歩み出ると、分身である「さまざまな時節」と「時」、「想い出」が現れ、「男」は、冬=黒、春=青、夏=赤、秋= 白と、色と結びつけられた四季、即ち人生を旅する。ただ、ノイマイヤーの四季は、冬に始まり、秋に終わるのだ。

ほぼ出ずっぱりの高岸は、雪を思わせるダンサーと戯れる無邪気さ、死を暗示する黒衣のダンサーへの恐怖、オレンジの服の「想い出」への淡い恋心、「時」 に相対する厳しさなど、刻々と変化する心情を全身で伝えて秀逸だった。「時」が腰の曲がった老人のマフラーやコートを「男」に着せ、老人が白い服の「想い 出」に変わる瞬間は衝撃的で、死の宣告を覚悟したような高岸の姿が余韻を残した。

斎藤は、「男」にそっと寄り添い、優しく包み込みながら、最後に突き放す「想い出」を、きめ細かに演じ分けた。「男」を追いこんでゆく「時」を務めた木 村は、常に冷静な目を保ち、峻厳な態度で「男」に迫り、ドラマを引き締めた。ほかに、夏の場で赤い半ズボンで現れた長瀬直義のソロと吉岡美佳とのデュオ や、冬の場の黒衣の男女2組の踊りが印象に残った。ドビュッシーの〈雪の上の足あと〉に始まり、三木稔や湯浅譲二の曲を織り交ぜ、シューベルトの《冬の 旅》の最終曲〈辻音楽師〉で終わる選曲も、内容に即して示唆深い。人生への憧れや焦燥、おののきなど、誰もがたどる道のりを、いわば摂理として詩情豊かに 描いてみせたノイマイヤーの手腕に改めて感じ入った。
(3月22日、ゆうぽうとホール)

「時節の色」「時節の色」「時節の色」