ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2008.03.10]

バットシェバ舞踊団の『テロファーザ』日本初演

イスラエルを代表するというより、世界的に活躍するバットシェバ舞踊団が、姉妹カンパニーのバットシェバ・アンサンブルとともに11年ぶりに来日し、2005年初演の『テロファーザ』を上演した。
舞台背景に、4台の巨大スクリーンが吊るされ、それぞれの下にダンサーが一人ずつ立っていてその顔のアップが、リアルタイムで映し出されている。ダン サーが踊りに参加するため移動すると、次のダンサーが控えに入って映る。それぞれのダンサーの動きもタイミングも異なるが、次から次へと入れ代わりが不規 則に繰り返されていく。

観客は、全体を観るべきか、個々のダンサーに注目するのか、あるいは出と入りの法則を把握しようとするのか、戸惑わされるオープニング。
「私は、観客がどこに注意をむけたらよいか分からないような場所が好きだ。私は、観客の選択にゆだね、すべてを包括することの出来ない個々の瞬間を撒き散 らす。観るという私たちの経験は、すべての要素を一度に理解できるということは関係ない」つまり、すべてを観る、とは<幻影>に過ぎない、とバットシェバ がプログラムで言っている。
そうした趣旨を反映したダンスが始まった。

リズムに合わせた歯切れのいい上半身の動きを、ステップを踏みながら変幻する群舞。スリムにシェイプアップされたダンサーの集団が、自在に描き出す流れが巧みに構成されている。
音楽はロックだが、時折、ハイパーなサウンドが鳴って舞台を盛り上げる。
リズムと動きの迷宮に迷い込んだ観客は、「どこを観るべきか」といった当初の疑問は忘れて、自然に身体が音楽に反応しているかのよう。
後半になると、カメラはソロを踊るダンサーを囲み、4台の巨大スクリーンに四方から映す。ソロのダンサーの回りをみんなが囲み、次々と交代する。このフ ラメンコなどでよく見受けるシーンは、ダンスならではの躍動感あふれるコミュニケーションがありおもしろかった。一人の黒人ダンサーが鋭い感覚で踊ってい て、もっともっと踊ってもらいたかった。
最後は、観客も一緒に踊りましょう、という流行の仕掛けだったが、ロックコンサート的な壮快な気分を味わった舞台だった。
(2月2日、神奈川県民ホール)