ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2008.01.10]

勅使川原三郎のソロ『ミロク MIROKU』

「ミロク」
 漠然とだが、最近の作品では勅使川原自身がソロで踊る時間が短くなっているような気がしていた。勅使川原作品の場合は、それぞれの演出の手際がじつに鮮 やかなので、舞台のヴィジュアルが印象の大きな部分を占める。しかし私は、勅使川原がソロで踊るシーンが好きだ。そこでは、勅使川原の身体に宿っている動 きの流れの美しさが、彼独特のダンスによって直裁に観ることができる。

新作『ミロク MIROKU』は、稲垣足穂の自伝的小説『弥勒』に想を得た、という。演出・振付・美術・照明・音響・衣裳、そして選曲まで舞台のほとんどすべてを勅使川原が仕切っている。

舞台に正方形のフロアを白く浮かび上がらせ、高く三面を囲んで色彩の光りを走らせる。
最初はじつにゆっくりとした動き。遥か彼方から軋んだピストンのような音響がリズムを刻む。スローな柔らかい動きが次第に、しかし時間をかけつつ速く なっていく。動きが速くなるに連れて、鮮やかなブルーの光りが三方の壁面をめまぐるしく走る。やがて、勅使川原が踊っているスペースに小さな正方形のピン スポットが当たる。彼はそのスペースから逃れ、背後の壁面にへばりつく。
一瞬のうちにに色彩の光りが消えて、再びフロアが白い光りに浮かび上がる・・・。
人々が弥勒という美しい像を通して仏の魂を感得するように、観客は勅使川原が鮮烈に描いた美しさによって始めて、ダンサーの身体に宿る踊る魂を見る、そんな気持ちが湧いた舞台だった。
勅使川原率いるKARASは、今年6月、『MIROKU』を持ってヨーロッパを回るという。ヨーロッパに観客は、ミロクに何を感じるだろうか。
(12月8日、新国立劇場 小劇場)