ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2007.03.10]

『如風』『ニュー・ホライズン』『PROJECT KALEIDO』

  能の太鼓方の伝統を受け継ぎ、コンテンポラリー・ダンスや現代音楽とも積極的にコラボレーションを行っている、大倉正之助が構成・演出した『如風』。音 楽・演奏はネイティヴ・アメリカンのロバート・ミラバル、振付は野坂公夫、武元賀寿子、内田香、美術は建築家の北川原温というスタッフが揃った。
ロバート・ミラバルの風の精が草原を渡るような音楽と大倉の太鼓が、日本人が伝統的に感じてきた自然を表す。北川原の構成によるのだろうか、照明が変幻 して様々の光の空間を築く。花を器に活けられるように、その空間の中でダンサーが自在にフォーメイションを創る。色彩も深海や宇宙を想わせるような深い色 が使われていた。
ダンサーが展開する動きが生命のリズムを刻む、かのようであった。
ただ、「万物の生成」「地上の人間たちによる混沌」「再生と調和」といった大きなテーマを描くためのテキストは、あまり重要視されていないようにも感じた。そのため、生気する事象に固有の時間が感じられない点が些か残念に思った。

(2月10日、新国立劇場 中劇場)

「如風」

 上村なおかが2年ぶりにソロ公演『ニュー・ホライズン』を行った。現在の身体についてのナイーブで鋭い観察が惻々と感じられる舞台であった。
会場はいつものベニサンピット。暗黒の中に、筒の中を無数のベアリングが猛烈なスピードで落下し衝突するような激しい金属音。グレーのワンピースの上村 が、何かに突き動かされる動き。感情が通っていない、見えない何かから衝撃を受けつつ動かされているよう。そしてついには動く意思も失って地に伏せる。
衝撃音が消え、やがて身体が微かに動き始める。ごく小さな太古から受け継がれてきた記憶を辿るような、局部的な非常に細かい動きである。
上半身と下半身がチグハグな動きが続き、身体は全体性を失い回復できていない。小さなメロディが流れ、少しづつ身体性が機能し始める。彼方から送られて くるようなかすかな金属音が流れ、次第に音量が増していく中で身体も動きと意思を回復していく。ごく単純化していうとそんなダンスであった。
現在、上村が感じている身体性を解体し、その蘇生に挑戦した舞台であった。
(2月9日、ベニサンピット)


「ニュー ホライズン」

「ニュー ホライズン」
 
二見一幸率いるカレイドスコープが、Project '07として三つの新作を上演した。
『Lambent』は光と闇、光の変化をテーマとして二人の女性ダンサーと男性ダンサーのトリオ。バーライトが降りてきて、舞台に横たわった二人の女性ダ ンサーをスポットの中に映すエンディングが洒落ていた。『A Lively step』は、ごく普通のスーツを着た5人の男性ダンサーが軽快なステップを楽しむ舞台。テクニックを競い合ったリ、遊戯的な感覚を分け合ったリ、軽い ユーモアをまじえた楽しいダンスであった。


「Confuse fact and fiction」
『Confuse fact and fiction』は、舞台の中央の床に直径2メートルくらいの円形のスクリーンを貼付けて、カラフルで抽象的な映像を流す。その映像を中心点として、女性 ダンサーたちが次々と出入りを繰り返しながらシャープな動きを見せる。映像とシンクロする動きの「カレイドスコープ」を覗いているような、多彩なヴァリ エーションが展開した。
二見一幸らしい洗練された動きの流れをみせた舞台であった。
(2月17日、横浜赤レンガ倉庫一号館)