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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2007.03.10]

新村英一ほかの戦時下の日本人を描いた『カーネギーの日本人』

 太平洋戦争の最中、ニューヨークの芸術の殿堂カーネギー・ホールに「バレエ・アート・ニムラ」というスタジオを開いて活動していた、日本人舞踊家をご存知だろうか。
彼、諏訪出身の新村英一は、21歳の時にアメリカに渡り、苦労して働きながらデニショーン舞踊学校に学び、ブロードウェイで最初の公演を行った。これが ニューヨーク・タイムズのジョン・マーティンなどに評価されて本格的な活動を開始。ニューヨークやヨーロッパの一流オペラハウスで自作の公演を行った後 に、カーネギー・ホールにスタジオを開いのである。
ここではドーリン、ニジンスカ、チューダーなども教えていたという。また、彼はニューヨーク時代の伊藤道郎とも交流している。



 

「カーネギーの日本人」

 

『カーネギーの日本人』は、太平洋戦争の最中、そのカーネギー・ホールの日本人舞踊家が運営するバレエ・スタジオを舞台に、ニューヨークで開業した歯科医と画家、舞踊家の3人の日本人とその子どもたち、米軍事機関との関わりなどを描いた反戦ミュージカルである。
真珠湾攻撃、ノルマンディ上陸作戦、サイパン上陸などの戦禍が広がる中、三人の日本人はカーネギー・ホールのバレエ・スタジオでポーカーに興じている。 そんなシーンで幕が開き、アメリカ軍の日系女性軍曹と歯科医の恋と平行して、娘のまなみの愛と恋人の戦死が描かれる。そしてまなみは、このスタジオでバレ エを習い始めることを決意する。


「カーネギーの日本人」
 この作品の企画・原案・振付の中川久美がこの歯科医の娘、まなみのモデルである。中川はその後、ブロードウェイの舞台で踊り、日本でも振付家として活躍している。
ダンス・シーンもふんだんにあるが、さすがにブロードゥエイで経験を積んだだけあって、ヴァラエティに富んだ洗練された振付である。主役はそれぞれが実力を発揮していたが、特に、日系の女性軍曹、九条華子に扮した剣幸がきりりと引き締まった見事な演技だった。
二つの祖国が戦火を交える不幸。祖国の戦争で引き裂かれる人々の反戦を訴える力は、じつに大きいことを改めて思い知らされた、素敵なミュージカルだった。
(2月11日、東京芸術劇場中ホール)