ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2006.08.10]

ロホ&カレーニョの『ドン・キホーテ』で世界バレエフェス全幕特別プロが開幕

  英国ロイヤル・バレエ団の新星タマラ・ロホと、アメリカン・バレエ・シアターの人気者ホセ・カレーニョを迎え、東京バレエ団がワシーリエフ版『ドン・キ ホーテ』を上演した。第11回世界バレエフェスティバルの一環としての全幕特別プロの第一弾である。この二人、前回の世界バレエフェスティバルで初共演 し、『海賊』や“黒鳥のパ・ド・ドゥ”のほか、『ドン・キホーテ』のグラン・パ・ド・ドゥも踊っているだけに、息遣いは見事に合っており、日本人ダンサー に違和感なく溶け込んで、華やかに舞台を盛り上げていた。
スペイン生まれのロホとキューバ出身のカレーニョだけに、気のせいか、二人が登場するだけでラテンの香りが漂ってきた。プロローグで、ドン・キホーテのひ げを剃るバジルのカレーニョと、その邪魔をするキトリのロホは、陽気に振るまい、表情豊か。続く広場の祭りでの、焦らしあったり、嫉妬したり、ストレート に情熱をぶつけるといったやりとりはお手のもの。おきゃんなキトリや天真爛漫なバジルの性格を爽快に演じた。カレーニョは身体で音楽を奏でるようにしなや かに舞い、いとも軽々とロホを片手でリフトした。ロホは快活さを際立たせたが、スカートの裾を手で持って品を作ると、別の魅力がこぼれ落ちた。「夢の場」 では、一転して静謐で優雅に踊った。
“狂言自殺”はオーバーな演技でなく、さらりと笑わせた。圧巻はグラン・パ・ド・ドゥ。ロホは力強い跳躍、ダブルを入れたフェッテや疾走するピケ、時間が 止まったような片足バランで目を奪った。カレーニョもダイナミックなマネージュや、変化に富んだピルエットで沸かせた。超絶技巧のオンパレードだが、二人 の品の良さが上質な感動を誘った。
東京バレエ団のダンサーたちも輝いていた。中でも、エスパーダの高岸直樹とメルセデスの大島由賀子が颯爽としたスケールの大きな踊りで華を添えていたの と、若いジプシー娘の井脇幸江の悲しみを全身から波打たせたソロが印象に残った。また、例えばロホのフェッテのタイミングにピタリと音楽を合わせるなど、 アレクサンドル・ソトニコフの鮮やかな指揮ぶりにも触れておきたい。(7月29日、東京文化会館)