ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2006.06.10]

K バレエのデュランテ、熊川と荒井、輪島の『ジゼル』

 熊川哲也の演出・再振付によるK バレエ カンパニーの『ジゼル』の再演を、二組のキャストで観た。
まずは、ヴィヴィアナ・デュランテのジゼル、熊川哲也のアルブレヒト、スチュワート・キャシディのヒラリオンというキャスト。演出、振付などについては以前にもこの欄で書いているので、改めて触れないが、やはり第1幕の演出は見事である。
特に、熊川がロイス(アルブレヒト)を踊ると顕著に感じられることだが、冒頭のヒラリオンのジゼルへのちょっと野暮というか素朴な愛情表現の後、ロイス の実にきめ細やかないたわりと溢れんばかりの優しさ。女性の情感に寄り添うような動きが、ヒラリオンのそれと鮮やかなコントラストをみせる。
ふたりだけで踊ることの恥ずかしさのあまり家に戻ろうとする初々しいジゼルを、そっと押しとどめ気を鎮めさせるようにベンチに導く。そして、もしもでき たらあなたの隣のスペースに座らせて欲しい、と乞うロイスの貴族らしいゆかしさ。こうした表現こそ、ロイヤル・バレエという優れた環境で育った熊川哲也の 真骨頂というべきであろう。従者に扮したエロール・ピックフォードがロイスを踊る熊川の気持ちを、しっかりと支えるように演じていたのが目をひいた。
そして熊川ロイスの愛情表現が深ければ深いほど、細やかならば細やかなほど、優しさがまさればまさるほど、物語はのっぴきならない悲劇へと突き進んで行くのである。
デュランテのジゼルやキャシディのヒラリオンも、熊川が舞台にそそぐ情熱を映して好演していた。(5月18日、東京文化会館)
もう一組、ジゼルを初めて踊る荒井祐子とアルブレヒトで主役デビューを果す輪島拓也の舞台も観ることができた。荒井祐子は落ち着いた品の良いお姉さんジ ゼルで、終始、舞台をリードして盛り上げた。第1幕と第2幕のコントラストも美しく感じられ、特に第2幕でアルブレヒトを思いやる秘めた強い心が浮かび上 がったのには感心させられた。
輪島のアルブレヒトも良かった。第1幕のヒラリオンの強引な合図によって、貴族たちが続々と集まってきて、バチルドと対面して絶体絶命となり、呆然と立ち尽くすシーンは、リアリスティックな迫力があった。第2幕もノーブルな雰囲気を感じさせる踊りだった。
もう一人、ペザントのパ・ド・シスで東野泰子と踊った宮尾俊太郎にも目を惹かれた。長身でハンサム、踊りも力強いものがあったので期待したい。
(5月20日、東京文化会館)