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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2006.04.10]

K バレエが『眠れる森の美女』と『コッペリア』を再演

 熊川哲也率いるK バレエカンパニーが『眠れる森の美女』と『コッペリア』を初めて再演した。どちらにも『白鳥の湖』の再演を観た時のような演出のサプライズはなかった。
よく知られているように、熊川はクラシック・バレエ全幕物の演出・再振付をまず、『ジゼル』から初め、次にこの大作『眠れる森の美女』をとりあげたので ある。当時、この熊川の大胆な公演プランに驚き、誕生間もないカンパニーの古典バレエの大作の初演にいささかの不安を感じた。しかしそれは杞憂に過ぎな かった。

今回の再演は、熊川ではなくヴィヴィアナ・デュランテとカルロス・マーティンの舞台を観たが、そんな杞憂とはまったく無縁の堂々たる舞台であった。
マーティンのフロムリント王子はなかな気持ちが入っていてよかった。細部の表現は未だしの部分もあるが、立派な身体が豪華な雰囲気を漂わしていた。デュ ランテのオーロラ姫は定評のあるところだが、前半はやや弱い印象だったが、グラン・パ・ド・ドゥはさすがに堂々たるものであった。
アンソニー・ダウエルがカラボスを踊ったのもこの舞台の大きな話題だった。かつて、ロイヤル・バレエ来日の際にこの役を踊ったが、あの時の迫力は未だ瞼 の裏に焼き付いている。その時に比べるとやや太めかもしれないが、手の動きや表情の作り方は真に迫って成熟しているし、舞台全体を支配する力にはいささか の衰えも感じられなかった。
松岡梨絵のリラの精には、悪と対決する力だけでなく優しさがあり、彼女の個性を生かした役作りで感心した。善と悪の対決を際立たせる、といよりも悪を優 しさで包み込んでしまうリラの精を興味深く見せてもらった。妖精たちも、副智美、東野泰子、長田佳世、神戸里奈、中平絢子とソリストが揃い、華やかで魅力 的。
東野泰子のフロリナ王女は柔らかい踊りで細やかな表情もよくみえたし、スチュワート・キャシディの豪快で繊細な踊りと合っていていい雰囲気の舞台を創っていた。
(3月11日昼、東京国際フォーラムホール C)

『コッペリア』は、神戸里奈のスワニルダ、芳賀望のフランツ、キャシディのコッペリウス博士、というキャストで観た。神戸のスワニルダはもう完全なはまり 役で、明るい可愛らしさを舞台いっぱいに溢れさせる。できることなら、コッペリウス博士邸の二階で博士お手製の自動人形になって、スワニルダたちのお茶目 で愛らしい冒険を、笑いを噛み殺しながら見ていたい、そんな気分にもなった。フランツに扮した芳賀は、技にキレがあり、スピードもインターナショナルクラ スである。細部にいろいろ学ぶべきことはあるだろうが、のびのびと育ってほしいダンサーである。
キャシディの博士は、一段としつこく娘たちを採寸していたが、彼のこの役の演技を観るのはほんとうに楽しみ。神戸のスワニルダとともに熊川版『コッペリ ア』の最大の成果ではないだろうか。また、英国ロイヤル・バレエのプリンシパル・ダンサーだったエロール・ピックフォードが、宿屋の主人に扮して舞台を盛 り上げていた。ロイヤル・バレエの文化は、今後もどんどん移入してほしいと思う。
(3月19日昼、東京国際フォーラムホール C)