ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2006.04.10]

NBAバレエ団がサムソヴァ版『白鳥の湖』を日本初演

NBAバレエ団が、ガリーナ・サムソヴァがイワーノフ版に基づいて振付・演出した『白鳥の湖』を日本初演した。キエフでバレエを始めたサムソヴァは、カナ ダ国立バレエ団やサドラーズウエルズ・ロイヤル・バレエ団で舞踊手として活躍しながら演出に進出した。『白鳥の湖』は、自身の蓄積を生かし、様々な版を取 り入れながら独自色を出したもの。

プ ロローグで、娘の姿のオデットがロットバルトにより白鳥に変えられるシーンを見せたが、終幕は、オデットが娘の姿に戻ってジークフリート王子と結ばれるの ではなく、王子と永遠の愛の世界に旅立つ形にした。また、ピルエットなどで見せ場を築く道化の代わりに王子の友人ベンノを登場させた。工夫が際立ったのは 第三幕。花嫁候補はハンガリー、ロシア、ポーランドの王女三人にし、それぞれにソロを与え、各国の民族舞踊をうまくつなげた。ロットバルトとオディールは スペインの舞踊手を従えて現われ、スペインの踊りは王子を惑わすのに効果的に用いられた。物語の自然な流れを尊重した演出だったが、細部での配慮が欲しい 気もする。例えば、第二幕で白鳥に戻ったオデットが去った後、ロットバルトを残して退場する王子に心の内を示す仕草が何かあれば、感銘は深まったと思う。

ダンサーでは、オデット/オディールに客演したモスクワ音楽劇場バレエ団のナタリア・レドフスカヤが光っていた。見栄えのするプロポーションで、バネの利 く脚を巧みに操り、しなやかさも強靭さも自在に表現する。オデットでは内に秘めた芯の強さ、オディールでは艶然とした態度を示した。王子役のセルゲイ・サ ボチェンコは、優雅な回転やジャンプを見せてベンノ役の李成洛の力強い技と好対照を成し、また惑いや驚きを素直に表現してレドフスカヤを包み込んだ。ロッ トバルトのマクシム・グージェレフもスケールの大きなジャンプで舞台にアクセントを付け、花嫁候補の清水彩妃、尾藤朋子、田熊弓子も安定した演技を見せる など、皆、健闘していた。それに比べて、ミスも目立ったオーケストラには奮起を促したいと思う。
(3月25日、ゆうぽうと簡易保険ホール)

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