ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2006.01.10]

日仏共同制作プロジェクト『Focus』

  <横浜ダンスコレクションR2006>のオープニングは、言葉、身体、映像、音楽が織り成す新しいパフォーマンスを模索する日仏共同プロジェクトの第二 弾、『Focus』。この時期に開催中のロバート・キャパ写真展『Off War』の特別舞台公演として企画された。演出・脚本・映像は、前作『Line-ライン』でも演出を担当した新鋭ヴェロニク・ケイ。ブダペスト生まれの キャパは、スペイン内乱や第二次世界大戦、地雷で爆死したインドシナ戦争など、戦地で活躍した報道写真家である。ケイは、フォトジャーナリズムの確立に貢 献したキャパの足跡や与えた影響を探る一方、生身の人間としての姿もとらえようとした。


まず、キャパが一時期住んだパリの街角や連合軍が上陸作戦を練ったというオマハ・ビーチの映像が映され、キャパの生涯が俳優のアレクサンドル・スタイ ガーにより語られた。スタジオ風の舞台では、ポーズを取るようにゆるやかに踊るダンサーの三浦宏之を、キャパと若き日の恋人ゲルダに扮したスタイガーとダ ンサーの東野祥子がカメラで追う。東野は後の恋人、女優イングリッド・バーグマンにもなり、抱え持つ手鏡風スクリーンに女優の演じた映画の場面がセリフ付 きで映写されると、それにうまく対応するキャパの言葉をスタイガーが語るといった具合。このアイデアは秀逸。キャパの名を高めた「崩れ落ちる兵士」という スペイン内乱での写真をバックに、三浦に兵士のポーズを取らせ、スタイガーが写真の特色や効果を分析してみせる。また、荒波のようにたち込めるスモークを かき分けて進む三浦と東野は、戦争や巨大な力に翻弄される姿を象徴しているように思えた。

キャパを知る人がその人となりや、会長を務めた国際写真家集団「マグナム」を通じて作家としての写真家の地位や写真著作権を確立させたことを伝える一方 で、写真が抱える問題点も指摘するなど、突っ込みは深い。キャパをフォーカスすれば、フォーカスすべき対象は広がらざるをえないのだろう。舞台にはフラン ス語と英語が違和感なく飛び交った。三人の出演者だけで良くまとめたとは思うが、ダンスの役割は物足りなく感じた。また映像のインパクトが前回ほどではな かったのは、キャパの写真に敬意を表してか。ただ、写真は動きの一瞬を切り取って定着するものだが、優れた写真は前後の動きや背後の物語も写し取ってしま えることを再認識させられた。
(12月17日昼、横浜赤レンガ倉庫1号館)