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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2005.09.10]

●ザハロワ、ラカッラなどをゲストに、第15回日本バレエフェスティバル

橘秋子記念財団の10周年を記して1984年に始められた、日本バレエフェスティバルは今年15回を迎えた。総勢38名のダンサーが種々の演目で妍を競った。

初日の幕開きは田中ルリと遅沢佑介の『海賊』第2幕のグラン・パ・ド・ドゥ。田中は堂々と踊ったが、遅沢が体調を落としているのか、もうひとついつもの イキの良さがでなかった。酒井はなと西島千博は、リン・チャールス振付の『内_uchi/外_soto』から「外soto~Conversations not heard」を踊った。しっかりとタイミングをとって、コミカルなリズムを観客に感じさせなければならないパ・ド・ドゥである。酒井も西島もそつなく、息 の合った踊りだった。志賀三佐枝、山本隆之のペアも『ライモンダ』第3幕のグラン・パ・ド・ドゥを落ち着いて踊った。

  キエフ・バレエ団のペア、アナスタシア・チェルネンコとデニス・マトヴィエンコは、『ラ・バヤデール』の幻影の場のグラン・パ・ド・ドゥ。見事なプロポー ションのチェルネンコとキレとスピードのあるマトヴィエンコの踊りで、フェスティバルらしい雰囲気がいっそう盛り上がった。

第2部は、島添亮子とロバート・テューズリーによるマクミラン振付の『コンチェルト』の2nd Movement。音楽はショスターコウヴィッチ、日本初演である。
島添の優れたバランス感覚が際立ったが、視線がやや安定性を欠いたようにも感じられた。テューズリーもしっかり支え、ケレン味のない緻密な振付の味を見せた。
 

『コンチェルト』

ゲストのラカッラとザハロワが<ファムファタール>を競演した。ラカッラはプティの『カルメン』。彼女はカルメンのキャラクター、感情表現を自家薬籠中のものとしていてゆうゆうたる舞台である。共演はシリル・ピエール。
ザハロワはゼレンスキーとやはりプティの『若者と死』。女そして死神を踊った。青春の輝く生命の中に宿る死を暗示する役だが、ザハロワはちょっと悪役的なイメージだった。ゼレンスキーも衰えを見せない踊りだった。


『カルメン』

『若者と死』

『ドン・キホーテ』

第2日目は、橘るみと新国立劇場バレエ団のマイレン・トレウヴァエフが、『海賊』第2幕のグラン・パ・ド・ドゥを踊り、幕が開いた。橘るみはテクニック を軽々とこなす安定感抜群の踊り。こんれからどんなふうに自分を出して成長していくのか、楽しみである。志賀育恵と小林洋壱のシティ・バレエ組は『コッペ リア』第3幕の平和のグラン・パ・ド・ドゥ。素直でたいへん好感のもてる踊りだった。佐籐朱実と菊地研は『ドン・キホーテ』第3幕のグラン・パ・ド・ドゥ を手堅く踊った。菊地はこれからの日本人ダンサーとして、期待のもてる一人。もっと大きく成長してほしいものである。小嶋直也は『ラ・バヤデール』の幻影 の場を島田衣子と踊った。小嶋の完全復活が強く望まれたが、まだ少々無理だったようだ。どうか、がんばっていただきたいと思う。

第2部では、マトヴィエンコがチェルネンコと『海賊』の第1幕の奴隷の踊り。マトヴィエンコは余裕しゃくしゃく、難易度の高いテクニックを折り込んで会 場を沸かせた。ラカッラとピエールはプティの『プルースト』から「囚われの女」を情感を滲ませるように踊った。ラカッラの完璧とも思える身体は、黒髪が乱 れるとさらに感情が込められたように見えたのである。テューズリーと『ジゼル』第2幕のパ・ド・ドゥを踊った島添亮子は、緊張感を漲らせ舞台を引き締める 踊りだった。
(8月5日、6日、新国立オペラ劇場)


『ラ・バヤデール』

『海賊』

『囚われの女』