ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2005.09.10]

●金森穣〈no・mad・ic project2〉:[-festival]

りゅーとぴあ(新潟市民芸術文化会館)専属のダンスカンパニー「Noism」を率いる金森穣が、 自由な発想でプロデュースする〈no・mad・ic project〉(ノーマディック・プロジェクト)の第2弾として、[-festival]と題した公演を行った。 今回は、ヨーロッパのカンパニーで活躍中の、または海外から日本に拠点を移した日本人ダンサーたちに踊る場を提供し、広く紹介しようとするもの。 金森を含め海外での経験豊かな10人のダンサーが、単独で、また共演者を伴って参加、10分前後の個性的な小品10作が次々に披露された。

幕開けは、金森とリズムタッパーの熊谷和徳による注目の初コラボレーション。題して『HIM 』(Here In Mood)。タップダンス用の床にソファと長スタンドを置いただけの舞台。 静寂の中に足踏みの音が響く。何と熊谷の裸足のタップだった。靴をはいての妙味はさらに軽快。さすが“日本のグレゴリー・ハインズ”だ。 下半身の動きが中心の熊谷に対して、金森は腕や胴、脚を複雑にくねらせ、タップの音に全身で反応する。その柔軟な動きを、熊谷は音に読み換えるようにリズムを刻む。 心地よい緊張感にみちた舞台だった。

『HIM』



『Passomezzo』

『off light』

『Sleepless』

イスラエルのバットシェバ・ダンス・カンパニーの稲尾芳文はパートナーのクリスティン・ヒョット・稲尾と、オハッド・ナハリン振付『Passomezzo』と、2人で創作した『Dual Axis』を踊った。両方とも男女の関係性を描いたのだろうが、後者のほうがより直截的、セクシャルに迫った。スウェーデンのクルベリー・バレエの渡辺れいが踊ったケン・オソラの『off light』は、照明が彼女を追い掛けるように始まった。渡辺のスタイルの良さは際立ったものの、少々メリハリに欠けた。 フランス国立マルセイユ・バレエ団の遠藤康行はガブリエラ・イヤコノと自作の『Act.9』を披露。 遠藤のマイムのような振りで始まり、互いの体に足を掛けて崩す動作の繰り返しが目についたが、インパクトは今一つ。

ネザーランド・ダンス・シアターIIの小尻健太と湯浅永麻は、イリ・キリアンの『Sleepless』とP. Lightfoot と S. Leonによる『Post Script』を踊ったが、やはりキリアン作品の完成度が高い。 背景の白い幕に映し出されるダンサーのシルエットを効果的に用い、実と虚や、存在(=生)と非存在の世界を描き出し、奥深さを感じさせた。ダンサーはシャープな動きを息づかせていた。 現在はフリーの大野千里はコスタス・ツウカスを相手に、Andonis Foniadakisの『Again n' Again』を披露した。 ユニゾンやすれ違い、ソロなどで一組の男女の行方をとらえたものだろうが、大野の伸びやかさは生きていた。

『Dual Axis』


『Post Script』

『NINA-prototype』

『3A』


『Again n' Again』
Noismの団員である井関佐和子が踊ったのは、金森の『NINA-prototype』。 イスに座ったまま始まったソロは、バレエ的なポーズを採り入れ、それを崩し、また人間というより別の生物のようなイメージも漂わせながら、動きの密度を高めていった。 締めくくりは、ドイツのフォーサイス・カンパニーの安藤洋子で、日野晃と構成・演出した『3A』を披露した。共演は男性ダンサー2人だったが、存在感のある安藤が2人を従えた観がある。 「まじめに遊ぶ」ことを狙ったそうで、互いに組み合ったり、離散したり、踊りの流れを断ち切りもした。音楽や拡声器の使用を含めて全般に挑発的なだけに、好みは分かれるだろう。

日本での活躍の場が少ない海外の日本人ダンサーたちに光を当てた[-festival]の意義は大きく、実際、ダンサーの技量を実感させられた。 ただ、1作品10分と公平なのは結構だが、それを10本も均等に並べるのが果たしてベストだろうか。 例えば、2作品を踊ったペアがいたが、それを長めの1作品にしたらとも思うが、均衡を欠くだろうか。優れた企画だけに、構成には一考の余地がありそうだ。
(8月10日、めぐろパーシモンホール)