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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2005.09.10]

●ルグリとガニオを招いて東京バレエ団が『眠れる森の美女』を上演

 東京バレエ団が、パリ・オペラ座バレエ団から、ベテランのマニュエル・ルグリと新進のマチュー・ガニオを招いて『眠れる森の美女』を上演した。 しかも、相手役は躍進目覚ましい上野水香と小出領子で、共にこのバレエ団でオーロラ姫を踊るのは初めてと聞けば、両方とも見逃せない。 実際、ルグリの格調高いデジレ王子、ガニオのいかにも初々しいデジレ、元気一杯の上野のオーロラ、可憐な小出のオーロラと、それぞれの個性が輝いた。

最初に観たのは2日目の、ガニオが上野と組んだ日。上野は、若さではちきれそうな無垢なオーロラを演じた。細く長い脚、カーブを描く甲が美しく、ローズ・アダージョでも難しい技巧を次々とクリア。 ポアントも安定していた。ただ身のこなしが少々直線的で、もう少しまろやかさが欲しいと思わせたが、王子との最後のデュオでは滑らかにつないだ。 これは、愛することを知る前と後との変化を伝える、上野なりの役作りだったのだろう。

ガニオは、2月の『ラ・シルフィード』に続く客演。絵に描いたような王子様で、現れただけでオーラを発する。踊れば、伸びやかな身体、優雅な脚さばきで魅了する。 特に、オーロラの幻を見た後のソロでは、躍動感あふれるジャンプで、彼女への愛や彼女を救う決意を鮮やかに歌い上げた。床に吸い付くような着地も美しい。上野とのバランスも良かった。 ただ、ルグリと比べると、控え目な役作りではあった。この日、小出はフロリナ王女を踊ったが、青い鳥の中島周ともども、端整なパフォーマンスが舞台に華を添えた。
 

上野/ガニオ


小出/ルグリ
小出といえば、5月の『田園の出来事』のヴェラ役で、あのシルヴィ・ギエムと張り合った演技が忘れ難いが、今度は愛くるしいお姫様役である。 柔らかな肩や腕の使い方、上品なステップで、慈しんで育てられたオーロラを表出。ルグリの素晴らしいサポートに導かれて、抒情性を漂わせて舞った。全体に均整の取れた踊りが、小出の強みだろう。

ルグリは、立ち姿も堂々として、ダンスール・ノーブルならではの美しさ。ガニオと比べると、より力強い、スケールの大きな踊りを披露した。 また、オーロラやリラの精に対しても、大人のムードというか、より積極的な演技を見せた。 さすが手の内に入った役である。この日、リラの精を踊った大島由賀子は、滑らかなステップで物語の進行を促し、カラボスの井脇幸江は、踊り込んだ役だけに、迫力に満ちた演技でドラマを盛り上げた。 フロリナ王女の高村順子と青い鳥の古川和則も、遜色ない出来映えだった。

この舞台では、パ・ド・ドゥや群舞のほか、アンサンブルも見所の一つ。中でも、4人の王子やカラボスの4人の従者、4人のオーロラの友人、4人の宝石の精たちが、そろって様々な回転や跳躍を披露したのには感心した。 少しでもずれれば見苦しくなるところだが、音楽に合わせて気持ち良くそろい、ダンサーたちのレベルの高さを印象づけた。 世界的なスターのまさに模範的な演技を楽しませた舞台だったが、一方で、東京バレエ団の若手の台頭を裏付けた公演でもあった。
(8月17日、18日、東京文化会館)