ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Tokyo <東京>: 最新の記事

From Tokyo <東京>: 月別アーカイブ

佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2005.02.10]

●モミックス『パッション』『オーパス・カクタス』

 アメリカから飛びきりユニークなダンス・カンパニー、モミックスが来日した。芸術監督のモーゼス・ペンデルトンは、人間の身体を造形のように自在に操り、超現実的なイメージの世界を表出する奇才。その特異な才能は、二種の演目から十分うかがえた。

Aプロの『パッション』は、マーティン・スコセッシ映画監督の『最後の誘惑』に使われたピーター・ガブリエルの音楽を用い、「生命と宇宙の融合を形成して ゆく」もの。「情熱」「情欲」「キリストの受難」などの意味を併せ持つ多義的なタイトルや、東西の音楽を採り入れた音楽同様、舞台上のパフォーマンスも多 様だった。舞台前面の透明なスクリーンには大樹や氷河、神々の絵や古代の像などが次々に映し出され、背後でダンサーが演技する。縦一列に並んだ五人がそれ ぞれ腕を動かす導入部は千手観音を思わせ、四つん這いの男性とその背に乗った女性が一体となって手足を動かす様は記号のようにも見え、神秘的なイメージを かきたてる。シルエットを際立たせる照明が詩的情緒を倍加してもいた。十字架上のキリストを思わせる場面や、新体操やアクロバット的演技もあった。ただ、 各々のヴィジュアルな美しさは有機的にテーマに結びつかず、もどかしさを覚えた。

Bプロは『オーパス・カクタス』。鳥やトカゲやサボテンを模してみたり、男が女を肩車して回ったり、女性群が大きな扇を開閉しながら踊ったりと、砂漠で生 息する動植物の世界をファンシーなイメージで見せる。だが、男性陣が長い棹を軸に跳ねたり回ったり、組み合わされた巨大なリングを男女のペアがシーソー遊 びのように回転させながらポーズを取ったり、闇の中で男が足先につけた火の玉を振り回したり……となると、これはもうサーカスのショー。確かにダンサーは よく鍛えられているし、コンビも抜群。作品の狙いからして、遊び心一杯の舞台であって構わないとは思うが、モミックスがそれだけではつまらないではない か。
(A=1月19日、B=22日昼、共に東京国際フォーラム・ホールC)