ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Tokyo <東京>: 最新の記事

From Tokyo <東京>: 月別アーカイブ

佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2005.02.10]

●ハンブルク・バレエ団『眠れる森の美女』

振 付の偉才、ジョン・ノイマイヤー率いるハンブルク・バレエ団が八年振りに来日した。在任30年を越えた芸術監督との絆は一層強まっているようだ。演目は、 古典に独自の解釈を加えた『眠れる森の美女』(1978年)、音楽をバレエ化した『冬の旅』(2001年)、オリジナルなドラマティック・バレエ『ニジン スキー』(2000年)。みな日本初演だ。

日本ツアーの開幕は『眠れる森の美女』。ノイマイヤー版は、ジーンズ姿の現代の若者として現れたデジレが森で嵐に遭い、善の精や悪の精、眠るオーロラ姫の 幻影を見て物語の世界に誘い込まれるプロローグと、現実世界に引き戻されたデジレがベンチで眠る娘を見つけるエピローグを加えた三幕仕立てで、宮廷の時代 設定はバロック全盛期から、チャイコフスキーやプティパがこのバレエを創作した十九世紀末に移し替えられている。すると当時眠りに就いた姫は現代に目覚め ることになり、バレエの伝統と現代がつながりもする。妖精のソロやローズ・アダージョ、青い鳥のパ・ド・ドゥなどプティパの主要な振付を残しながら、自分 の振りで全体を彩り物語を進めるという構想も生きてくる訳だ。

第一幕の中心はオーロラの洗礼式。デジレの姿は宮廷人には見えないが、逆に、悪の精がオーロラに死の呪いをかけ、善の精が姫は眠りに就くだけと死の呪いを 封じるのは彼にしか見えず、それが第三幕で姫を救いに向かう伏線となっている。第二幕で、肖像画にイタズラ書きをし、バレエの稽古より読書に夢中で手を焼 かせるやんちゃなオーロラの描写が何ともユーモラスで笑わせる。場面は十六歳の誕生祝いの宴となり、求婚者に変装した悪の精が捧げたバラの棘でオーロラは 倒れるが、デジレはただ見ているほか術がない。
第三幕でデジレが悪の精と果敢に戦いオーロラの元にたどり着くと、姫は自分で起きて動きだす。無意識のまま口づけを受けるのでなく、デジレの姿を認めてか ら口づけをかわすよう主体性を持たせた所に現代性がうかがえる。デジレは結婚式でオーロラと華麗に舞った後で倒れ、エピローグへ移る。最後まで幻想と現実 を巧みに錯綜させた展開である。

ダンサーのレベルは高く、プティパの技法をきちんとこなしていた。デジレのイリ・ブベニチェクは結婚式で典雅なジャンプや回転を披露し、ジーンズ姿の時と の対照を際立たせた。シルヴィア・アッツォーニは安定したテクニックでたおやかなオーロラを好演。善の精のヘザー・ユルゲンセンやフロリナ王女のエレン・ ブシェーも美しかったし、悪の精のオットー・ブベニチェクはダイナミックな演技で緊迫感を盛り上げた。特筆すべきはアレクサンドル・リアブコで、芝居気 たっぷりのカタラビュットを演じた後、青い鳥では完璧なまでに美しいブリゼやアントルシャで魅了した。
(1月27日、神奈川県民ホール)