ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Tokyo <東京>: 最新の記事

From Tokyo <東京>: 月別アーカイブ

関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2004.12.10]

●小林紀子バレエ・シアターのディーン版『ジゼル』

 小林紀子バレエ・シアターが30周年の記念公演で初演したデレク・ディーン版の『ジゼル』を再演した。初演でも踊った島添亮子がジゼルを踊った。
ディーンは演出に工夫を凝らしている。例えば、ジゼルがアルブレヒトの裏切りが間違いのないものになって狂乱に陥る第1幕の終盤には、妖気を漂わす鳥の 影を飛ばせたり、稲妻とともに白いベールを冠った精霊がさっと背景を横切るなど、魂魄の舞う第2幕ヘ向けて雰囲気を盛り上げる。さらに第2幕は、ジゼルの 墓に詣でる母ベルタとヒラリオンの姿を見せて幕を開ける。これもまた、現実から幻想へと到るための配慮であろう。マイムも意味を表す点に意が用いられてい て、演劇的味わいを舞台全体に与えている。反面、音楽劇としてのニュアンスがいささか弱まってしまうのは否めないところかもしれないが。

さて、島添凉子のジゼルはいっそうほっそりしたかのようで、優雅に純潔の美を踊った。とりわけアームスが美しく、巣立ったばかりの白鳥が舞っているかの ようなたおやかなにごりのない動きであった。精霊となった島添ジゼルも愛を訴え、ミルタに許しを乞う場面などに気持がこもっていたし、アラベスクも美し かった。その中でも敢えて言わせてもらうとすれば、自身を裏切った男を許しなお救済の手を差し伸べるジゼルは、マリアのような母性の優しい美しさが現れな ければならない。ラストの踊り疲れて倒れたアルブレヒトの手をとって胸に抱くあたりに、そうした表現をもう少し強調してもらいたかった。ロバート・テュー ズリーのアルブレヒトも洗練された落ち着いた踊りであった。
(11月21日、ゆうぽうと簡易保険ホール)