ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2004.12.10]

●室伏鴻の『始原児』、韓国劇団<美醜(ミチュ)>の『崔承喜 伝説の舞姫』

  室伏鴻の構成・振付・演出による『始原児』が、エクスペリメンタル・ボディのシリーズとして上演された。室伏と三人の男性ダンサー(目黒大路、鈴木ユキ オ、林貞之)が踊った。まずは三人のダンサーの宙吊りから始まった。三人はお互いの引力に導かれるように集まって衝突したり、磁石の同じ極が反発するよう に離れたり、倒れたりする。室伏は全身に銀粉を塗って登場し、舞台を這い回る。後半は三人がそれぞれ、自分がすっぽり入るよりは少し小さな蓋のない白塗り の細長い箱を持って踊る。最後には、そのひとつの白い箱を立て、天辺にあたる30センチ四方くらいのごく狭い平面に、三人が同時に乗っかる。その上で、し ばし、パフォーマンスを続けるのである。危険なスリリングなダンスである。三人は激しく倒れるなど、板敷き床と緊密な関係のある動きで、足のあちこちに血 が滲む。その闘いの終わりには、温かい喝采が贈られた。
(11月23日、麻布die pratze)

韓国の劇団<美醜(ミチュ)>が静岡のグランシップで『崔承喜(チェ スン ヒ) 伝説の舞姫』を上演した。崔承喜は、よく知られているように、1930年から58年頃にかけて活躍した世界的に名声を得た舞踊家である。崔承喜は、石井漠 に師事して美貌と天賦の才でたちまち頭角を現し、独立してパリやヨーロッパの各地、ニューヨークなどでも踊って非常な好評を博した。しかし、戦争と革命の 大きなうねりの中で厳しい政治的な局面に立たされることも多く、苦労して朝鮮民族の舞踊の確立を目指した。

<美醜(ミチュ)>は、崔の生涯をミュージカル仕立てで描いている。師の石井漠始め、夫でコミュニストの安漠、娘の安聖姫、安漠の友人の金潤、崔の弟子の 金民子、崔の朝鮮舞踊の師の韓成俊などが登場して、波乱に満ちた崔の生涯を描いている。日本人としては朝鮮舞踊を称揚するものとして迫害され、朝鮮に移れ ば日本軍に協力したのではないか、と疑われる、という二重の政治的圧力に翻弄されつつ、新たな民族舞踊を追求していく姿は感動的だった。
(11月6日、静岡グランシップ大ホール)