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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2004.12.10]

●東京バレエ団『白鳥の湖』&『ジゼル』

東 京バレエ団が、バレエ・ブラン・シリーズI・IIとして、絶大な人気を誇るウラジーミル・マラーホフを招いて『白鳥の湖』と『ジゼル』を上演した。マラー ホフは、現在ベルリン国立バレエ団の芸術監督を務めているが、東京バレエ団への客演は多い。今回は、上野水香と組んだ『白鳥の湖』と、吉岡美佳と踊った 『ジゼル』を観た。

まず『白鳥の湖』。マラーホフが登場した途端に舞台が華やぐ。何と言っても、優雅な雰囲気、すらりと伸びた脚が魅力だ。まだ恋を知らないのに、花嫁を決め るよう告げられたジ-クフリートの複雑な心境を、はかなげに宙に伸ばした人差し指だけで表現できるダンサーは、そうはいない。オデットに魅せられていく心 の動きや、オディールをオデットと思い込んで愛を誓った後の悔恨も、王子という役柄に合わせ、あくまで品良く、しかし的確に伝える。経験豊かなだけに、長 身の上野水香のサポートにも配慮が行き届いており、上野の緊張を次第に解きほぐしていった。ただ、この日は体調が万全ではなかったようで、ジャンプにいつ もの冴えが見られず、細かいステップにも乱れがあったのは惜しまれる。

『白鳥の湖』
上 野がオデット/オディールを踊るのは、移籍後、初めて。長い手足、しなやかな肢体に恵まれているだけに、見事な開脚や迫力あるジャンプは見栄えがする。だ が、胴や肩から腕にかけての動きが少々硬い。以前に比べ、オデットの心情に一歩踏み込んではいたが、王子と出合った時の恐れや驚きが、安堵に、さらに愛や 信頼へと高揚する様が、より細やかに演じ分けられればと思う。むしろオディールのほうが素直に表現できたようで、テクニックの面でも、スケールの大きな跳 躍やダブルを入れたフェッテでアピールした。
また、道化役の古川和則とロットバルトの高岸直樹が、こなれた踊りと演技でドラマを引き締めていた。井脇幸江、大島由賀子、木村和夫、後藤晴雄の4人によるスペインの踊りは、迫力があり見事だった。
(11月8日、ゆうぽうと簡易保険ホール)


『白鳥の湖』

『ジゼル』

『ジゼル』

『ジゼル』でのマラーホフは、ジークフリート役とは対照的に、きびきびした動作でストレートにアルブレヒトの心を表す。村娘ジゼルへをからめるように追い 回し、ヒラリオンには敵意をむき出しにする。それだけに、伯爵という身分が露見した後や、ジゼルが息絶えてからの落差が印象的で、真の愛に目覚めてから の、静かでひたむきな心情が際立った。彼ならではの、宙に浮かぶような跳躍や、優雅で軽やかな足さばきも楽しめた。ジゼル役の吉岡美佳ともよく息が合い、 仕草のやりとりが台詞として聞こえてくるようだった。
吉岡は、無垢な娘らしい恥じらいやためらいを全身で表現していた。村娘では爽やかなジャンプ、ウィリーになった後はたおやかな跳躍と踊り分け、バチルド姫 の婚約指輪を見たショックを、空に伸ばした指先を細かく震わせて伝えるといった細かな役作りも見せた。ヒラリオンの木村和夫は、こなれた演技で応じてい た。ミルタの大島由賀子の踊りはよく均整が取れていたが、この役には今一つ威圧感が欲しい気がした。(13日、同) なお、両演目ともアレクサンドル・ソ トニコフ指揮東京ニューシティ管の演奏だったが、テンポがひどく遅くなる時があり、間延びしたような感じを与えたのが気になった。