ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2004.12.10]

●フィリップ・ジャンティ・カンパニー『バニッシング・ポイント』

  独創的な舞台を創造するフランスのフィリップ・ジャンティ・カンパニーが、2003年に発表した『バニッシング・ポイント』を上演した。表題は「消失点」 の意味。ジャンティが目指すのは、マイムやダンス、人形、様々な仕掛けを駆使したファンタスティックな舞台だ。なお、同カンパニーの来演は、1988年の 初来日以来、これで11度目という。

真っ暗な舞台前面の床を水平に走る光の線の中央に、垂直な線と左右斜め上45度からの線が矢印をなすように突き刺さる。矢印の右下のコーナーがわずかに開 き、その空間から男が顔を現した。明るい空間が見る間に広がっていく。登場するのは、「彼」と、パートタイムの水泳コーチで本来は哲学者という男や、自身 を食らう人食い鬼、記憶をなくした踊り子ら、「彼」の心の内を旅する5人の宇宙飛行士だそうだが、これは説明を読まないとわからない。観客は、ステージ上 に提示される、次々に浮かんでは消えていく心象風景をさ迷うことになる。そこは潜在意識の世界、いや消失点を越えた領域なのだろう。

登場する人物は、帽子をかぶりコートを着込んで旅する一群になったかと思うと、座っていた人がこつ然と落下し消えてしまったり、口から水を噴き出す人が波 にのまれたり、宙から人がころがり出て来たり、人間が小型の人形になったり、はたまた、空気でふくらました巨人が現れて人形の頭を食べたり、一瞬のうち に、しぼんで消えたりといった具合だ。人間や人形に合わせて、宇宙も伸縮自在のようだ。ユーモアがあり、詩的でシュールでもあるジャンティのワンダーワー ルド。コート姿の人形たちが一塊となって歩んで行く幕切れには、ほのぼのとした温もりが漂っていた。
(11月11日、ル・テアトル銀座)