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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2004.10.10]

●松山バレエ団の『シンデレラ』

 第17回目を迎えた松山バレエ団のジャパン・バレエでは、『シンデレラ』と『ジャパン・バレエ 21』が上演された。清水哲太郎振付による『シンデレラ』は、シンデレラが父母とともにオルゴールで遊んでいる幸せな時代をプロローグに置いている。両親の形見となったオルゴールは、シンデレラの現実生活の中の幸せを希求する心の象徴となる。

『シンデレラ』は奇跡の物語である。シンデレラに起るファンタスティックな奇跡の象徴はガラスの靴である。しかし、シンデレラにアットランダムに奇跡が 起ったわけではない。シンデレラは公正無比、どんなに苛められてもいじけたり反発したり復讐したりしない、いわば絶対性を備えた理想の象徴ともいうべき少 女、と設定されている。そのため、時の女王が自ら現れて彼女に奇跡を起すのである。
第1幕のシンデレラの森下洋子のソロは、そうした姿をダンスで活き活きと映しだしている。見事な表現力である。

松山バレエは『シンデレラ』に限らず、多くの作品に様々のアイディアを使って優れた舞台を創っている。この『シンデレラ』では、彼女の義理の母と姉妹が 宮廷の舞踏会に招待され、にわかにダンスを習うシーンで、ヴァイオリニストを登場させた。これはピアノを使用する前は、バレエのレッスンはヴァイオリンで 行われていたということから発想されたのだと思われるが、ヴァイオリンを弾きながらのレッスンが、そのメロディとともに秀逸なパロディ・シーンを創ってい た。しばしば、プロコフィエフの曲をそのままパロディの描写のように使うる場合が見受けられるが、私はどうも関心しない。松山版のような演出的な配慮こそ が、プロコフィエフの曲を生かす方法だと思われる。ほかにも大きな時計を回転させて、その裏側からシンデレラが登場する、というアイディアも優れていると 思った。
(9月19日、ゆうぽうと簡易保険ホール)