ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Tokyo <東京>: 最新の記事

From Tokyo <東京>: 月別アーカイブ

関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2004.10.10]

●コンドルズ 夏のダンス公演 日本縦断大航海ツアー2004【ビッグ・ウェンズデー】

 今年初め、近藤良平が小学校時代を過ごしたというチリなどの南米ツァーを終えたコンドルズは、『ビッグ・ウェンズデー』を上演した。
曰く「‥‥全球直球勝負です。夏に海をモチーフにして作品を創る時点でもろ直球勝負です。‥‥案外、青春はあたりまえのように続いてゆき、終らないものかもしれません。‥‥」と。

いつものように、コンドルズ生命保険などのコマーシャル映像が上映された後、近藤良平がサーフボードに乗って舞台を横切るシーンから始まった。

 特におもしろかったのは、大波にさらわれて見知らぬ 浜辺にうち寄せられたロボットと怠惰な救急隊員とハードボイルドのズメオが、必死に記憶の断片を寄せ集めてやっとそれぞれに名前を付ける。するとすぐにま たまた大波が襲ってきて記憶を失う。同じように記憶を失った人々が打ち寄せらてきて、新たに加わった人を含めて名前を付けズメオに記憶が蘇りそうになる と、そこにまたまた大波が来て‥‥と繰り返す。このシーンをみていて、なにか自分の記憶のありさまがそのまま描かれているのではないか、と思うほど、今日 の記憶というものの姿をまざまざと感じさせられた。複雑煩瑣な現代のもろもろに対しても、私たちの記憶の容量がオーバーしているわけでは決してない。記憶 を蘇らせる力が日々衰えてきているのである。

忘れたらキーボードをたたけばいい、逆にキーボードで確かめないと不安になる。人類はすべての記憶をマシーンに委ねようとしているのか、大波の襲来で失った記憶を呼び戻そうと必死にもがく人が、ほんとうに健康に思えた。
ダンスシーンは、終幕近く、茜色の照明の中で大波とともに去り行く夏を想う気持を踊った、近藤良平のソロが素敵だった。
(9月17日、新宿シアターアプル)