ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Tokyo <東京>: 最新の記事

From Tokyo <東京>: 月別アーカイブ

関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2004.08.10]

●モンテカルロ・バレエのマイヨー振付『ロミオとジュリエット』『La Belle』

  ジャン=クリフトフ・マイヨーは、カンヌのロゼラ・ハイタワーの下で学んだ後、ジョン・ノイマイヤーのハンブルク・バレエ団のソリストとして活躍、 1993年からモンテカルロ・バレエの芸術監督を務めている。最近では、モナコのダンス・フォーラムの総裁に就任し、02年には自身の『La Belle(美女)』がニジンスキー賞を受賞している。

 ノイマイヤーのバレエ団で踊っていたからかどうか知らないが、非常にヴィジュアルのセンスに優れたイメージ豊かなステージを創る。

  たとえば『La Belle』では、16歳の誕生パーティにオーロラ姫を巨大なシャボン玉の中に入れて登場させる、という大胆な演出を成功させている。衣裳も悪の世界と善 の世界のそれぞれの住人であることを象徴的な表現で、巧みに表している。ここでは王子の母が人喰い鬼のカラボスで、オーロラ姫の善の世界を破滅に追い込も うと狙っている。シャルル・ぺローの原作童話の恐ろしい部分と、チャイコフスキーのバレエ『眠れる森の美女』のメルヘン的世界の対立を描いている。

『La Belle』

チャイコフスキーのバレエ曲『眠れる森の美女』に、第3幕ではディヴェルテスマン部分の音楽を、同じチャイコフスキーの幻想序曲「ロミオとジュリエッ ト」に変えている。(7月23日、オーチャ-ドホール)『ロミオとジュリエット』は、キャピュレットとモンタギューが血を流して争うヴェローナの街で、ロ レンス神父が平和の祈りを捧げているシーンから始まる。ロレンス神父は霊的世界の指導者として、対立抗争を繰り返す現実世界に平和をもたらそうと、ロミオ とジュリエットを結婚させようとする。ほかにも物語の様々の局面で、彼は登場して運命を味方につけようと努力する。しかし結局、運命の悪戯によって、仮死 から目覚めたジュリエットはロミオの死体をみて絶望し、自ら死を選ぶ。

  ロミオとジュリエットが出会う、キャピュレット家の舞踏会のシーンの演出は見事であった。ジュリエットとパリス、ロミオとロザライン、キャピュレット夫人 とティボルトの3カップルが、それぞれの表情をみせながら踊る。さらに登場人物が目まぐるしく入れ代わり、敵の家にしのびこんだスリルと宴の盛り上がり が、適度に抽象化されて見応えがあった。

ティボルトのマキューシオ殺しは剣だが、ロミオのティボルト殺しは、マキューシオの血のりの付いた布による絞殺。この演出は、B級映画の殺人シーンようでかっこいいかもしれないが、バレエにはあまり馴染まないようだった。

『ロミオとジュリエット』

マイヨーの創る動きは、モダンダンスとバレエをミックスしたようなものが多く、ノイマイヤーの動きを彷佛とさせるものもある。動きにもう少し音楽性を感じさせてほしい、などと思った。
(7月119日、オーチャ-ドホール)