ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2004.08.10]

●井上バレエ団、プロコフスキー振付『ロミオとジュリエット』ほか

井上バレエ団が<ア・タッチ・オヴ・ラヴ>シリーズ?として、『ファウスト・ディヴェルティメント』(グノー曲、アンドレ・プロコフスキー振付) 『華』(ベルリオーズ曲、関直人振付)、そして『ロミオとジュリエット』(ベルリオーズ曲、プロコフスキー振付)を上演した。『ロミオとジュリエット』 は、プロコフスキーが1985年に振付けたもの。プロコフスキーは日本ではあまり馴染みがないようだが、世界の舞台で活躍したキャリアの持ち主である。彼 はエゴロワやペレッティに学び、ジャニーヌ・シャラのバレエ団でバビレやプティと踊ってキャリアを始めている。マルキ・ド・クエヴァス・バレエで踊った 後、ニョーヨーク・シティ・バレエに参加し、バランシンの『パ・ド・ドゥとデヴェルティスマン』『ブラームス=シェーンベルク・クワルテット』を初演して いる。ガリーナ・サムソワとロンドン・フェスティバル・バレエでパートナーを組み、ともにニュー・ロンドン・バレエというカンパニーを設立している。『ア ンナ・カレーニナ』(チャイコフスキー曲)や『三銃士』(ヴェルディ曲)他の全幕物も振付けている。『ロミオとジュリエット』はベルリオーズの曲の歌詞の ない部分を使用して、手際よくまとめている。冒頭は無音で、敵対する両家が激しく闘うサーベルの音やその足音だけで緊迫感を漂わせている。ジュリエットは 藤井直子が踊り、ロミオはナショナル・バレエ・オヴ・カナダのアレクサンダー・アントニエヴィッチ、ロレンス神父にはデンマーク王立バレエ団のジュリア ン・リンダルがゲスト出演している。

仮面舞踏会の出会いのシーンや群舞の扱いも音楽とマッチしていて見事。バルコニーのシーンのエメラルドのトーンも美しいし、爽やかなパ・ド・ドゥも好感 がもてた。冒頭のような舞台の現実音や、ロミオがティボルトを殺すシーン(スローモーション)の嵐の効果音などを音楽とうまくミックスさせて効果をあげて いる。

印象的だったのはラストの墓場のシーン。駆けつけたロミオが仮死状態のジュリエットをみて絶望し、毒をあおって朦朧となったそのときにジュリエットが目 覚める。ジュリエットは歓喜して二人はパ・ド・ドゥを踊る。しかし、それは永遠の別れのパ・ド・ドゥでもあった、という演出である。ほかにもこのような演 出はあるが、プロコフスキー版が最も効果をあげているのではないだろうか。
(7月24日、文京シビックホール)