ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2004.08.10]

●笠井叡と荻野目慶子による『サロメ』

 笠井叡の構成・演出に、荻野目慶子が出演したオスカー・ワイルドの『サロメ』が上演された。
笠井は「舞踊」と「言葉」の関係にこだわっている。前号のトピックスでもお知らせしたが、ルジマトフに振付けた新作でもルジマトフ自身のロシア語の言葉 を、モーツァルトのレクイエムの中に挿入して、不思議な効果をあげる演出を試みている。『サロメ』はそうした笠井の探究の実験上演の第一作である。「彼女 (荻野目)の声は不思議な響きに満ちていた。どのような楽器もだすことのできない響きだ。声の中では、日常的時間と神話的時間が交叉していて、声の響きの 中に入っていくと、そこには音楽的空間とはまったく異なった無限空間が広がっている」と笠井はいう。

舞台では「不思議な響きに満ちた」荻野目のサロメが、オスカー・ワイルドの戯曲の台詞を、舞を乞うヘロデ王に投げ付ける。そしてヨハネへの恋情と自身の 官能と陶酔を歌う。その「日常的時間と神話的時間が交叉する」声に感応して、笠井の鋭く表現力豊かな身体が独特の味わいのある軌跡を描いた。ダンサー二人 だけで創りあげたとは到底思えない、なかなか濃密な耽美的な舞台空間を体験することができた。「舞踊」と「言葉」による次回作も大いに期待したい。
(7月25日、スパイラルホール)