ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2004.05.10]

●アレッサンドラ・フェリとアルヘン・コレーラの『ロミオとジュリエット』

マクミラン版の『ロミオとジュリエット』は、2001年に10月に新国立劇場のレパートリーに加わっている。この時は、ヴィヴィアナ・デュランテとロバート・テューズリーがペアを組み、熊川哲也が特別ゲストとしてマキューシオを踊った。

今回は、マクミラン版のジュリエットを当り役とするフェリと、新国立劇場初登場となるコレーラのペアが人気を集め、チケットも発売たちまち売り切れ。
コレーラのロミオは恋の喜びをナイーブに伝え、フェリのジュリエットは愛し愛される喜びを、心の深部で受け止めピュアーに信じ、生きる道を選択する。見事なカップリングだった。現在、ロミオとジュリエットを踊る最も優れたのペアのひとつではないだろうか。

  マクミラン版は、ルネッサンス前夜のヴェローナの広場に集まる群集の一人一人に、当時の社会の中の職業を示し厳密かつ具体的に時代性を表し、と同時に、鋭 く対立するモンタギュー対キャピュレット二家の争いの、息詰まるような緊迫感を舞台に鮮明に現す。多くの才能ある振付家のヴァージョンの中でも、とりわけ 優れた振付である。特にこのヴァージョンの場合、幕開きから二家の対立がロミオ、マキューシオやティボルトなどの貴族のみならず、群集までも巻き込んでし だいに激しくなり、ついには死者が出るにおよんで大公が出馬して収拾されざるを得なくなるまで、一気呵成に観客の意識を舞台に集めてしまうように、音楽と 一体となった演出がなされている。このドラマの流れのクライマックスは、ロミオ・グループvsティボルト・グループの迫力ある剣劇をダンスによって表す シーンであり、前半の演出の勝負どころである。マクミランが兄事していたクランコ振付版が、背景の人々を抽象的に表現することによって、時代を越えて人間 の深部に迫ろうと試みているのとは、対象的な群集の描き方である。

また、今回は怪我のためにロミオを降りてパリスに扮した森田健太郎を観ることができた。森田は、パリスをいたずらに戯画化することなく、ひたすらジュリ エットを愛した一人の若者として、心を込めて好演した。その結果、墓場に駈け戻ったロミオに虚しく殺されてしまったが、愛する女性の墓前に死体として横た わり、彼には想像を絶する事態だったに違いないが、正気に返ったジュリエットに一瞥を授けられる、という僥倖を得た。ジュリエットにとってあくまでロミオ の死体が最優先ではあったが、絶望の果てに自殺した彼女の心の片隅に、パリスの面影がかすかに残っていなかった、とは決して断言できない。森田・パリスは そんな印象さえ残した。(4月16日、新国立劇場)



「ロミオとジュリエット」
フェリ & コレーラ