ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2004.05.10]

●『インソムニア』青山ダンシング・スクエア公演2004

 青山ダンシング・スクエアの今年の公演『インソムニア』は、5人の振付家による7つのダンスのコレクションである。インソムニアとは「眠れない人たち」のことだそうだ。

芸術監督を務める小川亜矢子が、バッハによる『クリスタル・パルティータ』、グレッキの『出会いなきふれあい』、シューベルトの『インソムニア』を提供 していた。『クリスタル・パルティータ』は、右手に薄い布を着けた9人の女性ダンサーによる活発な力強い踊り。眠りのない世界に住む女神たちの魂をアンサ ンブルで表した作品だった。最も印象的だったのは、上半身は裸に赤いパンツの男性ダンサー(桑名和也)と3人の女性ダンサーが踊った『出会いなきふれあ い』。緊張感のある幻想の中で、男と女のあるいは情念と感性の象徴的な幻影のドラマが踊られ、よくコントロールされたシャープな動きによる鋭い造型が、な かなかカッコ良かった。『インソムニア』は、井神さゆり、吉川文子、高部尚子が出演。三つの丸いスポットの中に3人が寝転んでいるシーンから始まり、ソロ とアンサンブルをくり返しながら、眠りとうつつの端境を描いた作品であった。

上島雪夫は『生きているうちが……』というタイトルのダンス。都会のホームレスのような一人の男の10代、20代、30代の回想と、今時間を刻んでいる 現実の街の姿を交錯させたダンス・バラード。この人らしく、率直な実感に基づいた作品だった。最も会場を沸かせたのは、近藤良平が振付けた『3分間で眠る 男と3分間だけ待つ女』だった。飛び入りのような感じで近藤自身がダンスに加わることもあったが、基本的には、男性ダンサー一人対女性ダンサーの群舞とい う構成で、男と女の機微が掛け合いで踊られる。ダンスのために特別に創られた動きは特にない。すべてが、日常的に普通に使われているジャスチャーだった り、遊戯や格闘などの動きを巧みに組み合せて、つぎつぎと至極自然な間を創ってダンスを展開していく。得難い才能というべきだろう。今回は、男女の出会い や遊び、勝負などのニュアンスを連鎖して見せた。木佐貫邦子の『昼間ノコタエ』は、現実を眠りの幻想の中で捉える踊り。この人が舞台に描きだすイメージは 非常に美しく洗練されたものである。特に、最近作はそのように感じさせられる。新上裕也の『「………」「・」』は、自分の夢に迷いこんだ男の戸惑いを描い たダンスのようであった。黒いパンツに白いトップ、白いソックスを着けた女性ダンサーの群舞が甘い幻想を感じさせる、ちょとおもしろいイメージの作品だっ た。(4月11日昼、世田谷パブリックシアター)

振付:近藤良平
「3分間で眠る男と3分間だけ待つ女」

振付:小川亜矢子
「出会いなきふれあい」

 

振付:小川亜矢子
「インソムニア」