ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Tokyo <東京>: 最新の記事

From Tokyo <東京>: 月別アーカイブ

関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2004.04.10]
Dance Cube16号はリニューアルして発信しましたが、いかがでしょうか。アプローズ欄も0号から15号まで書かせていただき、予想外の多くの方々に読んでい ただいているのが分かりました。特に最近は、バレエダンサーの方や舞踊関係の方に、「読んでますよ」と声をかけていただくことがあり、ほんとうに喜んでお ります。どうぞ、今後もよろしくお願いいたします。

楽しかったマシュー・ボーンの『くるみ割り人形』

  ボーン版の『くるみ割り人形』は、公演前からさまざまの情報が入っていたし、DVDも事前に観ていたので、どうかな、と思っていたが、舞台はやっぱりおも しろくてたいへん楽しいものだった。孤児たちがつぎつぎと幕前にでてきて、思い思いの表情を客席に向かって作ってみせるプロローグも良かった。孤児たちの 表情は、それぞれバラバラに異なっているのだが、胸の奥にしまっている想いは一緒、と観客は感じた。なかなか見事なつかみだったと思う。

それから忘れてはならないのは、キューピッドのカップル。このクララを導くフェザータッチの優しさが、クララの思い込みの強さやくるみ割り人形の男の子たくましさと微妙なコントラストを描いて、なんともいえない良いムードをこの作品に与えている。

DVDを観た時には気が付かなかったのだけど、雪のワルツのスケートのシーンでは、それぞれのダンサーが衣裳の裾をつまんで揺らせ、氷の上を進んでいるスピード感を表していた。こうしたディテールの表現のさまざまなアイディアが冴えていた。

さすがに、ボーンがずっとあたためていた作品だけあって、レベルの高い表現力でどのシーンも描かれていた。また、前号のメール・インタビューで友谷さん が書いている「カーテンコールは最高の笑顔で」、という考え方は素晴らしいと思う。こういう舞台への謙虚で深い愛を込めるスピリットを失わないかぎり、マ シュー・ボーンの創る舞台は、いつもおもしろくて楽しいものになることは疑う余地がない。
(3月3日、東京国際フォーラムC)