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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2004.04.10]

『ファウスト』ワルプルギュスの音楽劇

 北九州芸術劇場がオープニング記念としてプロデュースし、世田谷パブリックシアターと提携公演した『ファウスト』が開幕した。(3月15日、世田谷パブリックシアター)

原作は有名なゲーテ。構成・演出は「遊◎機械/全自動シアター」の活動を終了した白井晃、作曲・音楽監督は中西俊博、脚本・作詞は能祖将夫、というスタッフで、これに振付の近藤良平が加わった。

長年学問に没頭してきたファウストが、老いても真理に到達できないと人生の虚しさを知り、毒薬をあおろうとした時、悪魔メフィストが現れる。メフィスト は「悪魔の力で、この男を満足させたら、魂をもらう」と神と契約する。「時よ止まれ、お前は美しい」とファウストが言ったら、それが合図となると。白井は 上演したら10時間はかかる、という膨大な作品を2時間40分にまとめた。しかも通常は上演されない、後半の古代ギリシャへの時空を超越した旅や皇帝の国 家にかっかわる大事業などの部分も構成されている。

ファウストには筒井道隆が扮し、「人生に満足したい男」の悲劇をマルガレーテとの危うい関係の中に描いた。マルガレーテの篠原ともえは体当たりの演技、メフィストの石井一孝は悪魔の不条理なエネルギーを演じた。

白井が「遊◎機械/全自動シアター」時代から追求してきた音楽劇というスタイルの演出手法がとられ、中西が40曲作曲した音楽が独自の奥行きをドラマに 与えている。「日常から生れながら日常的でない動き、演技とダンスの間にあるようなもの」を目指した近藤良平の振付が、じつにスムーズなパフォーマンスを 創っている。ゲーテの大作の舞台化という難題を、見事にまとめた優れた舞台であった。

『FAUST』


『FAUST』