ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Tokyo <東京>: 最新の記事

From Tokyo <東京>: 月別アーカイブ

関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2004.03. 5]

ボリショイ・バレエのスターたちとアナニアシヴィリの『白鳥の湖』

 元ボリショイ・バレエのプリンシパルだったアレクセイ・ファジェーチェフが芸術監督を務める、 このグループ公演では三つの演目がとりあげられた。

冒頭に上演された『グリーン』は、ヒューストン・バレエの芸術監督でもあるスタントン・ ウェルチの振付。音楽はヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲を使っている。タイトルのごとく シックなモスグリーンのチュチュを纏った数名のバレリーナが後ろ向きに立ち、ゆっくりと背景 の闇の中に消えて行く、というオープニングシーン。墨絵のようにモスグリーンの色調で濃淡を みせる衣裳を着けたダンサーたちの、音楽と等間隔の動きで構成された舞台である。つぎつぎと展 開する情景の変幻を見ていると、まるで竹林を散策しているかのような気持ちになった。

『セコンド・ビフォー・ザ・グランド』は、やはりヒューストン・バレエに所属するトレイ・ マッキンタイアーの振付。音楽はアフリカン・ミュージックが使われている。こちらは一変して、 オレンジと黄色の濃淡のヴァリエーションを、衣裳、背景に配した舞台である。軽快なリズムと速い 動きでつぎつぎと場面を換えていく。「アフリカ諸種族に浸透している<死の1秒前に、人はそれま での人生の幸福な時間と最も重要な瞬間のすべてと思い出す>という考えに想を得て創られた」そう だ。しかし、死の影は感じられず、はかなげな幻想を際立たせたのであろう。

最後は『白鳥の湖』のハイライト。この作品をリハーサル中のバレエ団の王子役のプリンシパルが 、どうしても舞台に没頭できない、という想いを抱きながら夢見る幻想の中で『白鳥の湖』が展開 する、という設定である。追加振付はファジェーチェフ。指揮を兼ねたヴァイオリンのセルゲイ・ スタドレルが見事であった。
アナニアシヴィリが素敵だったのはいうまでもないが、ダンサーでジークフリート王子を踊っ たアンドレイ・ウヴァーロフが、端正なプロポーションと落ち着いた演技と踊りで際立っていた。 (2月26日、東京文化会館)