ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2004.03. 5]

山田うんの独舞『テンテコマイ』、岩渕多喜子の『Against Newton II』

  山田うんの独舞『テンテコマイ』を観た。初見だが、なかなか魅力的な舞台だった。子供の頃、身体が弱く病気も経験し、健康を願ってダンスを始めたそうだ。 そうした身体の弱いことを意識したダンサーであり、作品もそこにから発想されているように思えた。赤ん坊のおしゃぶりのようなものをくわえ、ヒューヒュー と吹きながら踊る。ヒュッ、ヒュー、ヒュと吹き方のよっては、幼児語の言葉を発しているかのようだ。踊っている時は、どこかちょっとスネたような表情を浮 かんでいて、それがまた、不思議に魅力的であった。パフォーマンス終了後には、武術家の甲野善紀とのアフター・トークがあり、危機に瀕している現代の「身 体」について鋭い指摘があった。 (1月31日、シアタートラム)

岩渕多喜子の『Against Newton ・』も初見である。四角のフレームをつけただけの素の舞台で女二人、男一人のダンサーが密度の濃いダンスを見せた。始まりは、男性ダンサーはずっと逆立し ていて、二人の女性的な振り。波の音とともに、死体のように身体の自由を失った女性一人をめぐる踊り。自在に動ける身体は、意外に自由を失った身体を棄却 することができない。つぎは、一人の女性ダンサーの指揮するようなアクションに対する、二人の動き。最後は、三人で床に倒れ落ちる動きのヴァリエーション のくり返しで、ほとんどの動きが床の10cmくらい上の空間で行われていた。「一度投げ出された物体は放物線を描きながら落下する」というニュートンの法 則を、人生になぞらえ、加速度ゼロへ向かって落下(死)する瞬間に、生きようとする人間のひとつの姿を見い出す。岩渕は、そこにダンスの運動の実体をみよ うとしているそうだ。 (2月15日、新国立劇場小劇場)

山田は個人的にこだわりながら身体性を追究しており、岩渕は身体自体の中に潜む法則を追究している。対照的な出発点から、ともに今日の身体性の一面を浮かび上がらせることに成功している、私にはそう見えた。

『テンテコマイ』

『Against Newton II』