ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2011.06.10]

ビントレーの本領が発揮され始めた、新国立劇場バレエ団『アラジン』

デヴィッド・ビントレー:演出・振付『アラジン』
新国立劇場バレエ団
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デヴィッド・ビントレーが2008年に新国立劇場バレエ団のために振付け、世界初演した『アラジン』が再演された。
アラジンは山本隆之、プリンセスは本島美和、そして八幡顕光と小野絢子という2組のペアを観た。ともに初演を踊っているダンサーだ。
再演になって新国立劇場バレエ団のダンサーたちがビントレー作品の趣旨の理解をいっそう深め、『アラジン』だけでなくビントレー振付のディティールにも馴染んできたということもあるのだろうか、物語全体がじつにスムーズに展開した。初演時から評価の高かった宝石たちの踊りはもちろん、アラジンとプリンセスが出会いの喜びを踊る浴室のパ・ド・ドゥ、ランプの精たちが、贅を尽くして王をもてなす踊りなども素晴らしく闊達だった。コール・ド・バレエもエネルギッシュに力感のある踊りで、心地よいリズムを刻んだ。

小野絢子は優しく愛らしく、フェミニンな雰囲気のある踊りだった。初演の時にはまだ「これでいいのかな」といった不安をのぞかせてしまうこともあったが、今回の舞台では理解が行き届いて納得した上で表情を作っていることが感じられた。八幡顕光とのコンビネーションもリフトにもう少しだけ安定感が欲しいと感じた以外は、若々しい表現をみせて充実していた。小野の表情の作り方には独特の味があるが、それが八幡の敏捷な動きとマッチしてこのペアならではの雰囲気を表している。八幡のダンスはステップも俊敏で、全身の動きに自然なスピード感があって小気味良い。

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本島美和は劇的表現に良く気を配っていたし、山本隆之もキャリアを活かしてそつなくこなしていた。ランプの精ジーンは両日とも吉本泰久が溌剌と踊った。
欲を言えば、この三人の主役の踊りがくっきりとコントラストを描いて、作品全体のアンサンブルをもう少し強く印象づけて欲しいと思った。その点はカール・ディヴィスのオリジナル音楽は聴きやすいメロデイだったが、やや劇伴的で単純に登場人物の心理を浮かび上がらせようとしていた。曲自体が傑出した美しさを感じさせる、というほどではなかった。
演出はヴァラエティに富んだ発想の表現を、優れた舞台装置を駆使して見せ、じつに見事だった。ランプの精の出現の仕方にしても様々な工夫が凝らされていて、観客を楽しませるエンターテイメントとしてのレベルは非常に高い。ただ観客へのサービスとしてなのか、中華風の獅子舞や長崎おくんちばりの龍のはりぼてが登場するが、逆に過剰に感じられて少々気になった。
(2011年5月2日、6日 新国立劇場 オペラパレス)

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撮影:瀬戸秀美
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