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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2009.11.20]

首藤康之も踊った中村恩恵の演出・振付『The Well Tempered』

中村恩恵:演出・振付『The Well Tempered』
第32回芸術舞踊展 MODERN & BALLET 2009
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神奈川県芸術舞踊協会による第32回芸術舞踊展 MODERN & BALLET2009が行われ、島田美穂 演出・振付『きよしこのよる』。中村恩恵 演出・振付『THE WELL TEMPERED』、高澤加代子 演出・振付『サンクスレター・・・あなたを忘れない』、岩田唯起子 演出・再振付『ジゼル』第2幕が上演された。

ヨーロッパでの活動を終え、2007年から日本を拠点としてつぎつぎと新たな創作を発表して注目を集める中村恩恵の『THE WELL  TEMPERED』は、首藤康之を招いて上演された。よく知られているように首藤は、マシュー・ボーンやキリアン作品を踊り、07年にはブリュッセルのモネ劇場で気鋭の振付家・ダンサー、シディ・ラルビ・シャルカウイの『アポクリフ』を初演、その後も世界各地をツアーしている。

『THE WELL TEMPERED』は、昨年、大阪の野間バレエ団に振付けた同名の作品を改訂したもの。アルボ・ペルトの曲によるPart1を木村規予香ほか8名、スティーブ・ライヒ曲のPart2はさらにダンサーが加わって20名のグループ、そしてJ.S.バッハの曲を使ったPart3は、中村自身と首藤康之が踊るという3部構成になっている。
表題となっているWell Tempered(ウエル・テンペラメント)は、古典調律のひとつで、ひとつの純粋な音程を保とうとすると、他の音程を純正にすることができない、という矛盾を解決しようとする方法。これを個人と社会の関係になぞらえて創られたダンスである。個人と社会の解決できないような矛盾は、知恵によって乗り越えることができなくても、愛によって他人を理解して受け入れることができるのではないか、そしてそこに新しい自分自身を見つけることができるはず、というモティーフを展開している。
グループのダンスは、ライプティヒ・バレエでプリンシパルを務めていた木村規予香を中心とした流麗なフォーメーションが見られた。Part3は、首藤康之と中村恩恵による美しい愛のデュオ。首藤の豊かな情感を感じさせるアームス、中村のおおらかで滋味のある動きが、舞台の空間をゆったりと使ったムーヴメントを成して、愛の尊さを静かに世界に訴えかけた。黒い模様のあるロングの薄地の衣裳が雰囲気を醸し、ラストの光の中に二人が消えていく美術も効果的だった、成熟した大人のコンテンポラリー・ダンスである。
(2009年10月18日 神奈川県民ホール)

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