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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2011.04.11]

下村、佐々木、志村、粕谷が踊った篠原聖一の『ジゼル』

篠原聖一:再演出・振付『ジゼル』
バレエ・リサイタル DANCE for Life 2011
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2001年から始まった篠原聖一が主宰するバレエ・リサイタル「DANCE for Life」も今年で10年目を迎えた。その区切りの時期に選ばれたのは、ロマンティック・バレエの代表作『ジゼル』への初めての挑戦だった。時を積み重ねていく中で古典への敬意がいっそう深まったのだろうか。
現役を退きフリーのプロデューサー、振付家としてはキャスティングに苦労したそうだが、ジゼルは夫人の下村由利恵、アルブレヒトは佐々木大、ヒラリオンには志村昌宏、バチルドとミルタは粕谷麻美というなかなかレベルの高いダンサーたちが配された。

演出・振付には大きな改訂はなく、極めてオーソドックスなものだったが、ぺザントのシーンはパ・ド・トロワで構成するなど、デティールには様々な工夫が凝らされていた。
第1幕ではジゼルとアルブレヒトの楽しい語らいのシーンを描く一方で、ジゼルの身体の弱々しさも丁寧に表していたし、愛する人に裏切られて狂気に陥って息絶える第1幕のクライマックスのシーンも、とりわけドラマティックに盛り上げようとする意気込んだ演出ではなく、ヒラリオンとアルブレヒトの立場の違いを物語の展開の中で自然に浮かび上がらせようとする意図が垣間見え好感が持てた。
アルブレヒトに扮した佐々木大は、経験豊かなダンサーらしく、全体に隙なくきれいに踊りをまとめ、安定感のある舞台だった。

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篠原のミューズ、下村由理恵は自身もアンサンブルを組んで活動しているが、『ジゼル』のような舞台では、そうした試みが優れた舞台成果にいっそう貢献したに違いない。英国スコティッシュ・バレエ団でゲストプリンシパルとして活躍した経験をもつ下村にとって、踊り慣れた役柄だったと思えるが、並のダンサーだとそれが逆にプレッシャーを感じさせることになったかもしれない。しかしさすがに下村は落ち着いていた。パートナーを組む機会の多い佐々木と息を合わせ、ロマンティックな雰囲気を醸して舞台を大いに盛り上げた。そこにはヒラリオンの志村、バチルド&ミルタに粕谷という配役の妙が、それなりの劇的効果をあげていたことも見逃せないだろう。
全体によく整えられ、演出的にも成功した水準の高い『ジゼル』だった。しかしとはいえやはり篠原には、とりあげる演目自体にも果敢で芸術的意欲を強く感じさせる作品を、様々の困難を乗り越えても選んでもらいたい、とも思った。
(2011年3月4日 メルパルクホール)

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撮影:岡村昌夫(テス大阪)/谷岡秀昌(スタッフ・テス)
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