ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2010.06.10]

勅使川原三郎、佐東利穂子による存在のコアに迫るデュエット

勅使川原三郎 振付『オブセッション』
bunkamuraシアターコクーン
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特にここのところ精力的な創作活動を展開している勅使川原三郎の最新作『オブセッション』は、勅使川原と佐東利穂子のデュエット。音楽はファニー・クラマジランのヴァイオリン演奏だった。
仄暗い舞台上に、数個の椅子(裏に灯りが付いている)と天から垂直に吊るしたいくつかの電球、中央には小さな机を一個バランスよく配している。机の下の部分は特に明るく、そこに肉塊のように小さく固まって佐東が縮こまっている。ごく普通の机や椅子のさり気ない配置なのだが、空間の中の光の微妙な位置のバランスが絶妙で、この角度から見ると宇宙はこういう風にみえるのだよ、と言われたら、なるほど、と納得させられる説得力がある。勅使川原三郎は、じつに優れた舞台美術家でもある。

勅使川原が登場して、身体の部位を鋭く動かす。勅使川原三郎の独特の文体の踊りにより空間が息づき始める。背後にうずくまっていた佐東が蠢いて机の下から外界に姿を現し、全身を伸びやかに動かす。まるでひとつの誕生のドラマが踊られたかのようだった。

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以後は、舞台上で演奏されるクラマジランのヴァイオリンとともに、それぞれの身体から発せられる存在のエネルギーが動きとなって脈打ち、交互に反発したり、同調を試みたりする動きが様々に展開し、デュットが踊られる。
男と女、あるいは個と個の存在が、光と闇の中に次第にそのデモーニッシュとでもいうべきコアを明らかにしていく、そんなふうにもみてとれるダンスだった。
佐東はほとんど出ずっぱりでフルに踊りっぱなし。ひ弱さはすっかり影を潜め、ソロのステージをこなした経験が活かされたのか、自身でエネルギーを発していくダンサーとなった。

(2010年5月21日 Bunkamura シアターコクーン)