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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2009.09.10]

ムハメドフと針山愛美が踊った『エウゲニ・オネーギン』

MID SUMMER BALLET FESTIVAL II
VALENTINO DANCE CENTER

ヴァレンティノ・ダンス・センターが主催した「MID SUMMER BALLET FESTIVL 2」が、ルーマニアのシビウババレエシアターとイレク・ムハメドフ、針山愛美ほかをゲストに招いて開催された。このダンス・センターは、1996年に来日したルーマニア出身のヴァレンティノ・バルテスが主宰するもので、4年前に開設されたという。

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まずは、シビウバレエシアターの「オリジナルルーマニアバレエ」が上演された。バレエやミュージカルを通じて、美しいルーマニア精神を伝える、という趣旨のカンパニーらしく、ルーマニアの音楽による華やかな民族衣装の民族舞踊を中心に構成した舞台だった。日本人ダンサーやピアニストも参加しており、明るく楽しい雰囲気の心暖まるダンスである。

そして、ムハメドフと針山愛美が踊る『エウゲニ・オネーギン』のパ・ド・ドゥ。
振付はムハメドフ自身。それにしてもムハメドフのダンスを観るのは久しぶりだ。確かペレストロイカが盛んに言われていた旧ソ連のボリショイ・バレエから、電撃的に英国ロイヤル・バレエに移籍したが、その理由は「娘の教育のため」だったと記憶する。
当時は最もボリショイ的と思われていたダンサーだったが、その後ロイヤル・バレエで見事に新たな物語バレエの表現スタイルを確立し、いっそうその評価を高めた。特に、『うたかたの恋』や『三人姉妹』などのマクミランの作品で目覚しいダンスと演技を見せた。
一番近いムはメドフの記憶は、マイケル・ナンとウィリアム・トレビットが創ったバレエ・ボーイズの映像の中で、じつにひょうきんなポーズをとっていたことだった。
現在はギリシャ国立バレエ団の芸術監督を務めているそうだ。

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ダークスーツを纏って下手奥から一気に走り出てきた姿は、まさにあの命が弾むようなダンサー、ムハメドフの躍動だった。
『エウゲニー・オネーギン』の美しい人妻となったタティアーナに再会し、オネーギンが掻き口説くシーンだ。かつてはタティアーナを見下して傷つけた後悔の気持ちと孤独な心を振り切るような、切ない情感を訴えるムハメドフ。今もオネーギンへの愛を胸に秘めながら、人妻としての矜持から振り切ろうとするタティアーナを踊るのは針山愛美。ふたりの表情が絡み合って、一瞬、心が通じたようにも見えたが、一人舞台に跪いていたのはオネーギン=ムハメドフだった。
動きのスピードが衰えないどころか、自身の振付だからだろうか、ダンスの流れのテンポはアップしたようにすら感じられた。針山の身体の美しい表情とともに感動させられた見事なパ・ド・ドゥだった。

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最後はヴァレンティノ・バルデス構成・振付・演出による『リーズの結婚』。バルデス自身がアランを踊るサービス版で、民族舞踊を採り入れたダンスがじつに楽しい舞台である。ストーリーは大筋をふまえて、バルデス流に再構成されたいたが、主役だけでなくコーラやリーズの友人たちもていへん活発に踊った。見応えのあるダンスシーンが、随所にふんだんにあるヴァージョンだった。
(2009年8月10日 目黒パーシモンホール)