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三光 洋 Text by Hiroshi Sanko 
[2010.12.10]

人間の聖なるものの探求するノイマイヤー『パルジファル』

Hamburg Ballet  ハンブルク・バレエ団
John NEUMEIER PARZIVAL – EPISODES ET ECHO
ジョン・ノイマイヤー振付『パルジファル』
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ハンブルク・バレエ団の引越公演がガルニエ宮で行われた。2006年ハンブルク初演の『パルジファル』である。
中世の騎士物語に通暁した振付家ジョン・ノイマイヤーが12世紀に書かれた原作からエッセンスと考えた挿話を選んで第1部「エピソード」と第2部「エコー」にまとめあげた。

戦場に倒れた父親の二の舞をさせまいとパルジファルを自然の中に閉じ込め、騎士の世界から隔離しようとした母親に反して、息子は騎士となるべく冒険の旅に出る。この自然児パルジファルが「罪ある王」と苦悩を共にしたり、女性たちとの接触したりした後に、「隠遁者」との出会いによって最後に存在の神秘と他者への愛に目覚める。
熊のぬいぐるみを手に、竹やぶから飛び出して外部を見出すところから始まる舞台は、最小限の効果的な装置と場面に適応した音楽(ワグナー、アルヴォ・ペールト、ジョン・アダムズ)によって、中世という時代や国を超えた人間の聖なるものの探求に迫ろうとした試みとなっている。
これだけ重いテーマと複雑な筋とあって前半85分、後半55分という長大な作品に仕上がっている。しかし、傑出したダンサーの技術と表現力に富んだ演技にも関わらず、舞台で何が表現されているかは多くの場面でわからなかった。
もちろん、パルジファルの母親が過去を追想して故人となった夫(パルジファルの父)の亡霊と踊るデュオから、死に至るまでの場面(ワグナーの『パルジファル』序曲がバックに流れる)のような、はっと胸を突かれるような場面がいくつかあったことは間違いない。
また一つ一つの動作に振付家が託したメッセージはもう一度見る機会があれば、読み取れる可能性はある。しかし、ノイマイヤー自身がリハーサル中につけていた作業日記にある「パルジファルの神話をバレエで表現することが実際に可能なのだろうか」という疑問は、振付家だけでなく誰の脳裏をもよぎったのではないだろうか。
(2010年11月13日 ガルニエ宮)

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※公演当日の写真ではありません
Photos:(C)Holder Badekow/Opéra national de Paris
※画像をクリックすると、大きな写真をご覧いただけます。

台本/クレチヤン・ド・トロワとヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハの原作による、音楽/ジョン・アダムズ リヒャルト・ワーグナー アルヴォ・ペールト、振付・衣装・照明 ジョン・ノイマイヤー(2006年12月10日 ハンブルク・オペラ初演)装置/ペーター・シュミット、音楽は録音を使用
 
パルジファル/エドヴィン・ラヴァゾフ、ヘルツェライデ(パルジファルの母)/ ジョエル・ブーローニュ、ガーミュレット(パルジファルの父)/ダリオ・フランコーニ、罪ある王/カールステン・ユング、オルゲルーゼ(若い魅力的な女性) /エレーヌ・ブーチェ、笑わない女/アンナ・ローデール、隠遁者/アレックス・マルティネーズ、イテール(ヴェルメーユ騎士)/キラン・ウエスト、ゴルハウトのゴルネマンス/イヴァン・ウルバン、ガヴァイン(騎士)/ ティアゴ・ボルディン、ボホルト(騎士)/ アレクサンダー・トルーシュ、リオネル(騎士)/ヨハン・シュテグリ、ハンブルク・バレエ団