オペラ座ダンサー・インタビュー:ヴァランティーヌ・コラサンテ

Valentine Colasante ヴァランティーヌ・コラサンテ(エトワール)

1月5日、怪我で降板したアマンディーヌ・アルビッソンに代わって、一公演だけ『ドン・キホーテ』のキトリ役を踊ることになったヴァランティーヌ。文句のつけようのない舞台を務め、その晩エトワールに任命された。感極まった声で任命を発表した芸術監督オーレリー・デュポン。その彼女に駆け寄ったヴァランティーヌがしっかりと抱き上げられるという印象的なシーンは、任命に立ち会った観客たちにより大きな感動をもたらした。公式ポートレートも早速エトワール担当のカメラマンJames Bort により撮影された新しいものに変わり、ヴァランティーヌのエトワール時代がスタート !

ヴァランティーヌはマックス・ボゾニの元で学び、オペラ座バレエ学校に1998年に入学。8歳と若くして入学した彼女は第一ディヴィジョンと第一ディヴィジョンを2回繰り返し、そして2006年に17歳で入団した。4年後にコリフェに上がり、その翌年スジェに。稽古熱心で確実なテクニックには定評がある彼女は、2013年からプルミエール・ダンスーズとして活躍。舞台空間で放つ彼女のダイナミックなエネルギーは5名のプルミエール・ダンスーズの中でも際立ち、今シーズンの『ドン・キホーテ』では街の踊り子に配役される一方、キトリの代役にも選ばれていた。昨秋ピナ・バウシュの『春の祭典』で踊った生贄役で、エトワールへの準備はできている証明を示した彼女ではある。しかし、オーレリー・デュポン芸術監督が就任後に任命したのは20代前半のダンサーばかりで、また年頭の任命は滅多にないことでもあって、今回の彼女の任命は誰に予測ができただろうか。当夜の公演の出来栄えは技術的にも演技面でも素晴らしく、この晩、会場にいた人々は彼女の任命に心からの拍手を送った。
プルミエール・ダンスーズに上がった頃に比べ、一段とフェミニティを増し、身体のラインも洗練された感があるヴァランティーヌ。元気溌剌な娘キトリのような役が彼女の持ち味にぴったりと思えていたが、少し勝気なところのあるマルグリットあるいはマノンといった役でも観てみたいという気がする。エトワールとなった今、どのような舞台を見せてくれるのか。これからが楽しみだ。

『ドン・キホーテ』 photo Svetlana Loboff / Opéra national de Paris

『ドン・キホーテ』 photo Svetlana Loboff / Opéra national de Paris

Q:エトワール任命の瞬間はどのようでしたか。

A:その瞬間、任命が信じられませんでした。これは夢なのか?  それとも現実なのだろうか・・・って。これまでに何度か任命の場に立ち会っていて、そのたびに自分にもいつかこの機会が訪れることがあるのだろうかって思っていたのですが・・・。エトワールというのは子供の頃からの夢。心から強く夢見ていたことなので、この瞬間はとてもとても強烈なものでした。大きな喜びがあり、反射的にオーレリーに感謝を 伝えに行っていました。

Q:この日のオーレリーのセーターとジーンズという姿では、その晩に任命があるかもしれないとは、とても予測できませんね。

A:(笑)そうですね。本当に驚きそのものでした。それに任命なんて、まったく思ってもいなかったので・・・。キトリ役を踊ることを知ったのは、公演の3日前。私はもともと代役に入っていたので、キトリ役の稽古はすでにしてありました。だから準備はできていたといえるけど、公演まで3日というのはいささか短いですよね。パートナーのカール(・パケット)との稽古も必要だし・・。私のプライオリティは公演を全うすることでした。そして快適に踊れて、舞台を楽しめること。だから任命といったことに思いを馳せる時間もなかったんです。

『ドン・キホーテ』 photo Svetlana Loboff / Opéra national de Paris

『ドン・キホーテ』 
photos Svetlana Loboff / Opéra national de Paris

『ドン・キホーテ』 photo Svetlana Loboff / Opéra national de Paris

『ドン・キホーテ』 
photos Svetlana Loboff / Opéra national de Paris

Q:キトリ役は2016年の日本公演時に、フランソワ・アリュをパートナーに踊っていますね。

A:そうです。私が初めてキトリを踊ったのは日本でのこと。私がエトワールの役を踊った初めてのことです。だから日本とは特別な関係があるといえますね。 3年前でしょうか。今回、オペラ座でその役を初めて踊ったのです。

Q:代役として稽古をしたときは、パートナーのダンサーがいたのですか。

A:今回の『ドン・キホーテ』ではパブロ(・ルガザ)がバジリオに配役されていて、彼のパートナーはリュドミラ(・パリエロ)でした。彼女はマチアスとの公演もあったので、そのおかげで私はパブロと稽古ができたのです。しかもメートル・ド・バレエのクロチルド・ヴァイエが稽古を見てくれて・・・すごい幸運に恵まれたといえますね。代役として万が一のための稽古がしっかりと出来ていて、あとはカールと調整するだけという状態でした。代役だったので、私のためのコスチュームもちゃんと用意されていました。といっても、たった3日で本公演というは、ちょっと短かかったですね。

Q:かつてリュドミラが公演当日の朝に、2年前に踊ったきりのガムゼッティ役を突然踊ることになった、というのとは違うのですね。

A:はい。私の場合は準備ができていたというか、踊れるように準備がされていたのです。もちろん、これは大きな挑戦だったけど、怖いという気持ちはまったくありませんでした。

Q:カールと『ドン・キホーテ』を踊ったのも、当然これが初めてですね。

A:オペラ座では確かにこれが初めてだったけど、ずっと前にガラで一緒に踊ったことがあるんです。このときは公演の2時間前に、彼のパートナーが踊れなくなったから、って。だから私たち、こうしたことは経験ずみだったんです。私はカールをよく知ってるし、気も合うし・・・。彼は経験豊富なダンサーで、優れたパートナーです。信頼がおける相手なので、1月5日も、こうした面でのストレスがありませんでした。

『ドン・キホーテ』 photo Svetlana Loboff / Opéra national de Paris

『ドン・キホーテ』 
photos Svetlana Loboff / Opéra national de Paris

『ドン・キホーテ』 photo Svetlana Loboff / Opéra national de Paris

『ドン・キホーテ』 
photos Svetlana Loboff / Opéra national de Paris

Q:当日、公演がうまくゆくようにと何か特別なことをしましたか。

A:いえ。大切な公演が控えてる日は、私はそれにすごく集中します。朝起きたときに、みぞおちあたりにちょっと塊があるような感じがして・・・でもそれはそれはアドレナリンだから、いいわ、っと。ストレスを追い払おうといった努力はしません。むしろ、それを飼いならすようにします。この晩の公演でもいつもように喜びを舞台で感じたい、と願いました。この作品は3幕あって、長いものです。だから段階をふんでゆく必要があります。第一幕目でカールとの間でしっかり信頼関係が築けたら、二幕目は大丈夫。そして一幕、二幕とも上手くいったら、三幕目も順調に進む、って。踊り終わったときは、肩の荷がすっとおりました。上手くいったし、私も舞台を楽しんだし・・・と。でも、まさか任命には思いもよりませんでした。今回のように事前に何もなく、こうしてごく自然な感じに任命されたことに私はとても満足しています。とっても私に似合ってるって、思うんです。1月5日は生涯私の最良の日ですね。

Q:翌日は『ドン・キホーテ』の最終舞台があったのですね。

A:はい、予定通り街の踊り子役を踊りました。でも、この晩は公演だけでその前に何もなかったので、任命の後は家族と一緒にレストランでお祝いをしました。幸いにも両親はパリに住んでいて、私がキトリを一度だけ踊るとなったら、当然劇場に来ますよね。彼らは私がバレエを始めてから、ずっと支えてくれています。いつも「ヴァランティーヌ、信じていなさい。信じることによって、到達できるのだから」って。この晩、私、まったく眠れなかったんですよ。もし目覚めて、あれは夢だった ! となったらどうしようかと思って(笑)。感動がこみあげて、自分のそれまでのキャリアとか、いろいろなことに思いを馳せました。

Q:任命からまだ1か月弱ですが、何か変化がありましたか。

A:まだ1か月たってないとはいえ、変化はありますよ。認められたということによって、何よりも自信がつきますね。励まされ、やる気をより掻き立てられて・・・。芸術監督の信頼を得られたという事実は、本当に大きな励ましとなります。翼が得られるという感じ。そして『ダフニスとクロエ』では、クロエ役も踊れることになりました。こうした信頼の証、素晴らしいでしょう。もちろん日常は何も変わりません。欠点は欠点のままだしバーを掴んで、毎日しっかりと稽古を続けるだけです。

「テーマとヴァリエーション」photo Ann Ray/ Opéra national de Paris

「テーマとヴァリエーション」
photo Ann Ray/ Opéra national de Paris

Q:1月6日の『ドン・キホーテ』の最後の舞台では、どのような思いがありましたか。

A:街の踊り子を踊るのはこれが最後、ということ。そして、パ・ド・トロワを踊ることももうないのだわって・・・プルミエール・ダンスーズ時代から、パ・ド・トロワは何度も踊っています。テクニック面でとても難しく、その直後にヴァリアシオンもあって、多くのことを学ぶことができました。でも、28歳の今、もっと別のことを吸収したいので、新しいドアが私の前に開かれる必要がある、って感じ始めていました。

Q:では、任命は良いタイミングだったということですか。

A:はい。この任命は。本当に良い時に起きました。理想的な時期でした。準主役などをすべて踊ったところで、あとはその繰りかえしというところで、でも、それでは芸術的にもたらされることはなく・・・・。こうした経験はすべて役にたちましたけれど、別のことをしたい、という時期に来ていたんです。

「テーマとヴァリエーション」photo Ann Ray/ Opéra national de Paris

「テーマとヴァリエーション」photo Ann Ray/ Opéra national de Paris

Q:2012年のコンクールの結果、2013年からプルミエール・ダンスーズでした。この5年は長く感じましたか。

A:長いと感じたことはありませんでした。いろいろな役を踊れ、本当に配役には恵まれていたんです。1年に60公演とか、舞台の数もたくさんあって・・・とにかくたくさん踊りました。この任命によって大きな門が私の前に開かれ、まだ踊ってない他のクラシック・バレエの役へのアクセスが得られます。これは気持ちが安らぐことなんです。エトワールの代役というのと、正式に役についているというのは大きな違いです。リハーサルがあり、自分のヴィジョンを役のもたらせて・・・プルミエール・ダンスーズ時代には得られなかった快適なことなんです。

Q:オーレリー・デュポンとはどのような関係ですか。

A:初めて彼女と一緒に仕事をしたのは、私がプルミエール・ダンスーズの時に『テーマとヴァリアション』を踊った時です。ミルピエ監督の時代ですね。コーチをしてくれたオーレリーとはとても気があって、たくさんの話をしてました。芸術面で彼女の話はとてもためになることばかり。私は彼女のアドヴァイスに大いに耳を傾けました。彼女が芸術監督になってから、ピナ・バウシュの『春の祭典』の生贄役に至るまで、私がダンサーとして成長できるように配役されていました。『春の祭典』は芸術面、感情面で、大きな発見がありました。とても強烈な体験でしたね。今シーズンの最初から舞台数が多く、自信をつけてゆくことができました。周囲からも励ましがあって、ポジティブなスパイラルという感じ。オーレリーに負うものはとても大きいです。

「春の祭典」 photo Sébastien Mathé/ Opéra national de Paris

「春の祭典」 photo Sébastien Mathé/ Opéra national de Paris

Q:任命のステージで芸術監督も泣いているようでした。

A:私も泣きましたよ !  確かにオーレリーはとても感動していましたね。ダンサーを信頼し、芸術的に前進をさせて、任命をするというのは芸術監督として感動的なことなのだと想像します。私の任命については、もちろんこの晩に突然決めたことではなく、すでに彼女の頭の中にあったことだと思います。この1年くらい、私はとても配役に恵まれていて、 オーレリーはこうして私をプッシュし続けて・・・彼女からの信頼が、感じられていました。彼女が監督になってから、配役された各作品が私には意味があるものでした。毎回、私を進歩させる作品ばかりで・・・。

Q:念願のキトリに配役され、今後は何を踊りたいと夢見ますか。

A:たくさんあります。絶対に踊りたいと夢見ている役は3つあります。まず『ジゼル』。ミルタはすでに踊っていますけど、やはりジゼル役を踊ってみたいですね。第一幕の狂気のシーンは素晴らしいだろうし、 第二幕だって、もちろん。それから『白鳥の湖』。プルミエール・ダンスーズに上がった時のコンクールの課題曲で、この時はヴァリアシオンを踊っただけ。とても好きな作品なので、ぜひ全幕で踊ってみたいです。白鳥も黒鳥も興味あるし、このパーソナリテイの二重性ということも面白いと思います。3つめはマクミランの『ロメオとジュリエット』。いつかオペラ座のレパートリーにこれが入って欲しいと、願っています。アレクサンドラ・フェリが踊るのをみて、この作品に完全に恋をしてしまったんです。それ以来いつか踊れたら、とずっと夢見ています。ヌレエフ版がどうこうというのではありません。私はマクミランの振付が好きで、それを大好きなフェリが踊ったのを見たせいでしょうね。

Q:コンテンポラリー作品も多く踊っていますね。

A:はい。私のキャリアにおいてコンテンポラリー作品も、大切な位置を占めています。中でも私に多くのことをもたらし、とても印象に残っているのは、前シーズンのキリアンとの仕事です。『ベラ・フィギュラ』と『詩篇交響曲』の2作品を踊りました。彼との仕事は忘れがたいものですが、今、私が夢見ているのはマッツ・エックと仕事をすること。来シーズンに彼の創作が予定されていて、とりわけ踊りたいのがこれなんです。ダンスの世界の神話的存在の彼がオペラ座に来て、創作する。これは素晴らしいことです。期待しています。

Q:オペラ座で過去に踊られたマッツ・エックの中では、何が好きですか。

A:『アパルトマン』が一番好き。とくに掃除機の踊り !  それから長いことオペラ座では踊られていないけれど、彼の『ジゼル』も好きです。これ踊れたらって、夢見ています。彼のカンパニーが踊った『ジュリエットとロメオ』も見たことがありますが、とてもきれいな作品ですね。彼の作品ではこの3つが好きです。

pari1802b_09.jpg 「ジュエルズ」ルビー photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

「ジュエルズ」ルビー photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

Q:今シーズンは『ダフニスとクロエ』の後は、何に配役されていますか。

A:『ダフニスとクロエ』のあと、レパートリー入りするオフェッフ・シェシュターの作品を踊る予定なんです。彼は素晴らしい才能の持ち主。一緒に仕事をできるのが、今から待ち遠しいです。幸運なことに、私はプルミエール・ダンスーズに上がってから、クラシックとコンテンポラリーにとてもバランスよく配役されているんですよ。

Q:最近、来シーズンに創作があるポール・ライトフットのオーディションがあったそうですね。

A:はい。2日間12時から19時までオーディションがあり、私も昨日参加しました。来年の公演なので。今のところまだ結果は出ていません。彼も一緒に仕事をしてみたいコレグラファーの一人です。

Q:オーディションには団員全員が参加したのですか。

A:そうです。オーレリー・デュポンの方針は、創作のためのオーディションは全員が参加して、階級に関係なしにコレグラファーが自分のセンシビリティに沿って自由に選べることなんです。いいことですよね、全員にチャンスがあるというのは。

Q:『ダフニスとクロエ』に戻りますが、リュセイオン役も踊るのでしょうか。

A:クロエとリュセイオンの2役を私は踊ります。リュセイオンはもともとの予定通りで、それにプラスされてクロエをジェルマン・ルーヴェと踊ることになったんです。この作品はよく知っているし、ミルピエのスタイルもわかっているので、クロエを踊ることは全く未知の新しいことが増えたと、いう感じではないのですね。それに公演までまだ1か月近くあるし・・・。

Q:作品の創作者としてミルピエがリハーサルをみるのですか。

A:いえ、彼はアメリカで自分のカンパニーの仕事があるのではないでしょうか。私たちはバレエ・マスターのリヨネル・ドラノエと稽古をしています。彼はこの作品に精通していて、それに昨春の日本での公演のときもミルピエではなく彼だったし・・・。

Q:今シーズンは『ティエレ/パイト/ペレーズ/ シェシュター』がオペラ座の最後の公演ですか。

A:シェシュターの後は『リーズの結婚』に配役されたい、って私は思ってるのですけど、どうなるかまだわかりません。この作品、とっても好きなんです。リーズって快活なおてんば娘でしょう。もしこれがなければ、来シーズンの公演の準備ということになりますね。

Q:オペラ座外の活動として、オペラ座のイタリア人ダンサーというグループの一員ですね。

A:私はフランス国籍ですが、両親ともイタリア人なので、私もこのグループのガラに参加しています。雰囲気がとてもよく、のびのびと踊れるグループなんです。これからはエトワールとしてオペラ座の仕事が増えてしまうけれど、今後もこのグループの公演は毎回でなくても参加していきたいですね。

「ラ・バヤデール」 photo Little Shao/ Opéra national de Paris

「ラ・バヤデール」 photo Little Shao/ Opéra national de Paris

Q:最近はどこで公演がありましたか。

A:今年の1月の休暇中、ブラジルに行きました。1月17日から21日まで、サンパウロで踊りました。私はシモン・ヴァラストロ(オペラ座スジェ)が創った2作品。1つがチュチュで踊ったクラシックの創作で、テクニック満載の難しいものでした 。もう1つはコンテンポラリーの創作で、とてもきれいなパ・ド・ドゥ。これはグループのリーダーのアレッシオ(・カルボーネ)と踊りました。それから背広姿で踊るユーモラスなナット・ゼナラによるソロも。これは観客とのやりとりもあって、なかなか面白い作品なんですよ。

Q:昨年の夏はイタリアのラヴェロで公演がありましたね。

A:はい、これはとっても素晴らしい場所でした。海に面した野外劇場で踊るという、得難い経験ができました。このときはマテオ・レヴァッジがこのガラのために創作した作品を踊ったんです。その他、『エチュード』とか・・・。こうして小さなグループで踊るのって、最高。これはガラの基本ですね。素晴らしい場所に出かけていっても、観光の時間はありませんね。でも、私は踊るのが好きなので、それは気にはなりません。

Q:オペラ座以外ではどういったことに興味がありますか。

A:いろいろです。私は音楽が大好き。父はジャズ・ピアニストなんです。で、ジャズはもちろん、クラシックやジャンルを問わず、よくコンサートにでかけます。私の一番のお気に入りの趣味です。そして時間があれば、ここのところ最後まで読み通した本がないのでゆっくりと読書もしてみたいです。

Q:父親のピアノ演奏で何か踊ってみる、ということはありますか。

A:ヴァリアシオンの稽古とか、彼は助けてくれました。役を準備する時に、音楽が理解できないときは彼が説明をしてくれるんですよ。アクセントの場所とか・・・。とても貴重な助っ人です。

「ラ・シルフィード」 photo Svetlana Loboff/ Opéra natinal de Paris

「ラ・シルフィード」 photo Svetlana Loboff/ Opéra natinal de Paris

Q:環境問題、移民、子供の虐待、フェミニズム・・今世の中で起きてることの中ではどんなことに関心がありますか。

A:私は環境問題が特に気になっています。何か参加できることがあれば、地球のために何かしたいですね。最近のことですが、エトワールという肩書きで貢献できることがないか考え始めています。何かの団体の役に立てることがあるか、発言できることができるか、と・・。

Q:どういったエコロジー・コンシャスの行動をしていますか。

A:一般交通機関で移動しています。それから購入する食材に気をつけています。どこから来たかというトレーサビリティですね。まだあまり知られていないのだけれどLa Ruche qui dit Oui(ラ・リュッシュ・キ・ディ・ウィ)という、主にビオの生産者たちによる販売網を活用しています。生産物の長い運送を避けて、地産地消しようという意図のものです。そして、私は動物を虐待する農家からの肉や卵も買わないようにし、また、地球を破壊する農薬を使用する農家の作物も買いません。こういったことには目を光らせています。

Q:農業動物虐待に関するドキュメンタリー番組がテレビでもよく放映されています。

A:あ、私はテレビを持っていないんです(笑)。でも今の時代はインターネットでテレビ番組も見られるし、新聞からも情報は得られますから・・動物の虐待の映像はショックですよね。ひどく心が痛みますね。

Q:エトワールになった今、出産について考え始めていますか。

A:いいえ、今のところは考えません。オペラ座の舞台を存分に満喫したいので。まずは、ダンス。出産はプライオリティではありません。もちろん何年後かは考えるでしょうし、子供は絶対に欲しいと思っていますよ。でも、すぐにとは思いません。それにわりと高年齢で出産しているダンサーが多いので、年齢のことはあまり気になりません。

Q:キトリを始めて踊った日本については、どのような思いがありますか。

photo James Bort/ Opéra national de Paris

photo James Bort/ Opéra national de Paris

A:日本はエトワールの役を最初に踊った国です。日本の観客のいつも温かな歓迎には、心から感謝しています。世界中、日本の観客ほどダンサーにレスペクトを抱いている国は他にありません。彼らの心のこもった歓迎には、開いた口が塞がりません。なぜか日本では、とてもよく踊れるんですよ(笑)。観客席から伝わる波動のせいかしら・・・観客によって支えられてるのでしょうね。これは変わって欲しくないですね。私たちの訪日公演にこれからも常に満足して欲しいです。

Q:日本で特に好きな場所はありますか。

A:私、上野の商店街とか小さなレストランがたくさんあって大好きです。お寿司のレストランも素晴らしい。パリでは大きなご飯の上に小さな魚がのってのるのがお寿司だけど、日本はその反対ね。上野公園も好き。昨年の訪日公演のときは、ちょうど桜が咲き始めた時で、すごく美しかった。それから、渋谷の交差点。これは驚きそのもので、毎回小さな子供のように口をあんぐり開いて、眺めてしまいます。この光景は驚きであり、異国にきているという実感が湧く場所ですね。京都には日帰りしたことがありますけど、まだ日本の田舎を訪れる機会がないので・・・素晴らしいと聞いているので、ぜひいつか旅してみたいです。

photo James Bort/ Opéra national de Paris

photo James Bort/ Opéra national de Paris

ワールドレポート/パリ

[ライター]
大村真理子(在パリ・フリーエディター)

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