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大村真理子(マダム・フィガロ・ジャポン パリ支局長)
Text by Mariko OMURA 
[2016.08.10]

「パリ・オペラ座におけるアメリカの振付家 バランシンからフォーサイスまで」展をガルニエで開催中

バンジャマン・ミルピエはオペラ座バレエ団芸術監督の任を7月31日付けで終了した。在任中に彼が手がけたプログラム (注 :2015〜16年と2016〜17年の2シーズン) は、アメリカで活躍する振付家の作品がこれまでより多く見られるのが特徴。現在オペラ・ガルニエ内の博物館では9月25日まで、彼の置き土産のような展覧会が開催されている。
題して、「パリ・オペラ座におけるアメリカの振付家 バランシンからフォーサイスまで」。1947年から現在に至るアメリカを舞台に活躍するコレグラファーとオペラ座の 70年にわたる関係を映像、写真、舞台衣装などを展示し、いかにこの2つの結びつきによってオペラ座のレパートリーが豊かになっていったか、を時代順に追った4部構成だ。会場はオペラ・ガルニエ内の図書館/博物館だが、劇場内でもアメリカの振付家作品のコスチュームを期間中展示している。

pari1608b_01.jpg ポスター

展覧会の第一部は「最初の交換(1947〜1972)/ アメリカの(ネオ)クラシック・バレエ」で、ジョージ・バランシンにスポットをあてて、オペラ座におけるネオ・クラシック・バレエの登場を語る。オペラ座のシーズン2015〜16に、『ブラームス・シェーンベルグ・カルテット』がオペラ座のレパートリー入りしたバランシン。 彼が初めてオペラ座に招かれて創作したのが『水晶宮』で、これが1947年のことである。展覧会では作品の映像、初演時にアーチストのレオノール・フィニがデザインした衣装などを見る事ができる。なお、2014年の再演時にクリスチャン・ラクロワが新たに作りなおした衣装も展示されている。1960年代にバランシンの作品が複数踊られたが、その中の『4つの気質』について会場で流されているのは、ウィルフリッド・ロモリやクリストフ・デュケンヌなどが踊る最近の映像だ。
この第一部のもう一人の主役はジーン・ケリー。会場のモニターでは彼のインタビューなど様々な映像が見られる中、とりわけ見逃せないのは彼とクロード・ベッシーによる『Pas de Dieu』(1960)だろう。エトワール・ガラ2016年の最初のプログラムによると、バンジャマン・ペッシュとエレオノーラ・アバニャートが踊る予定だった作品だ。 ダイナミックにジーン・ケリーと踊る当時ホッソリと美しいベッシーが、この作品をぜひともアバニヤートで見てみたかった ! と、ちょっと残念になる。

pari1608b_02.jpg 第一部 ジーン・ケリーの『 Pas de dieux』(1960) のためのアンドレ・フランソワによるコスチュームデザイン pari1608b_03.jpg 第一部 バランシンの『パレ・ド・クリスタル』(1947)2014年の再演時にクリスチャン・ラクロワによって作り直された(左)

第二部は「実験の時代(1973〜1980)/アメリカンのコンテンポラリー・ダンス」。アメリカのコンテンポラリー・ダンスに対して、オペラ座が開かれた時期を取り上げている。
展覧会のオープンングにも姿がみられたが、このセクションのメインはカロリン・カールソン。彼女は「エトワール/コレグラフ」という肩書きでオペラ座に参加し、その後、パリ・オペラ座の舞台芸術リサーチ・グループ(G.R.T.O.P) のディレクターとしても活躍。これはオペラ座におけるダンスの実験的ラボで、例えばブリジット・ルフェーヴル前芸術監督も団員時代はこのグループに参加していた。マース・カニンガムがオペラ座のために『Un jour ou deux』を創作したのは1973年。衣装と舞台装置をジャスパー・ジョーンズ、音楽をジョン・ケージに任せるという、まさに現代作品らしいセレクションだった。バランシンの『アゴン』、ジェローム・ロビンズの『Scerzo fantastique 』『Cirque Polka』が踊られたのもこの時期のことだ。

pari1608b_05.jpg 第二部 リバーマン総監督時代の
アルヴィン・ニコライによる創作ノートの展示
pari1608b_09.jpg 『 Blake Works 1』を創作中のウイリアム・フォーサイス photo(C) Ann Ray/ Opéra national de Paris

第三部の「折衷と多様(1980〜1989)//若いアメリカのダンスから確立した振付家まで」は、ルドルフ・ヌレエフ芸術監督の時代についてだ。クラシック作品とコンテンポラリー作品を交互に組んでいたヴィオレッタ・ヴェルディ、ロゼラ・ハイタワーのやり方を踏襲した彼は、それをさらにシステム化していった。この時代も G.R.T.O.Pの存在はオペラ座のレパートリーの幅を広げるのに、大きく貢献。芸術監督ヌレエフの国際的な知名度の高さが役立って、アメリカから大勢の舞踊家をオペラ座に招くことが可能だったそうで、アルヴィン・エイリー、トワイラ・サープ、ルシンダ・チャイルズといった振付家の作品が踊られるようになった。ウィリアム・フォーサイスとオペラ座の関係が始まるのもこの時期である。初の創作『France/Dance』は1984年、そして『In the middle , somewhat elevated』は1987年である。

pari1608b_04.jpg 第二部 マース・カニンガムの『Un jour ou deux』(1973)を踊るウィルフリード・ピオレとジャン・ギゼリックス
(c)Colette Masson/ Roger Viollet
pari1608b_06.jpg 第三部 ポール・テイラー の創作『Le Sacre du printemps/The Rehearsal』(1984)の探偵の衣装 pari1608b_10.jpg 『 Blake Works 1』を創作中のウイリアム・フォーサイス
photo(C) Ann Ray/ Opéra national de Paris

第四部は「すたれることのないレパートリー(1990〜2016)/再演と創作のバランス」。バスチーユ劇場ができたことで、ガルニエ宮をバレエのためにより活用できるようになりレパートリーはより豊富になり、クラシック作品を護りつつ、コンテンポラリー作品の創作を増やしていっている。とりわけ、バランシン、ロビンズの作品が再演もあればレパートリー入りしての初演、というようにプログラムを賑わした。また彼らを師と仰ぐ若い振付家たちによる創作も上演された。
この展覧会が開始されたのは6月16日。その後ほどなくして始まったシーズン2015〜16年の締めくくり公演は、オペラ・ガルニエもオペラ・バスチーユもこの展覧会のテーマ通り、アメリカの振付家作品一色でまとめられた。オペラ・バスチーユでは前出のバランシンによる『ブラームス・シェーンベルグ・カルテット』の初演とあわせて、ジャスティン・ペックによる創作『Entre chien et loup』が。オペラ・ガルニエではフォーサイスのトリプル・ビルで、『Approximate Sonate』のニューヴァージョン、『Of Any If And』、そして1999年以来となる創作の『Blake Works 1』。なお、2016〜2017年の新シーズンは、この『Blake Works 1』と『ブラームス・シェーンベルグ・カルテットの再演、さらにペックの『 In Creases』の再演という3作品で幕をあける。
(ガルニエ宮図書館博物館 6月16日〜9月25日)

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ウィリム・フォーサイスの『In the middle , somewhat elevated』、
トリシャ・ブラウンの『O zlozony/ O compoisite』『Glacial Decoy』、カロリン・カールソンの『シーニュ』の4作品の衣装と映像を鑑賞できる階段席が、展覧会場の奥に設けられている。
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『Entre chien et loup』を創作中のジャスティン・ペック
photos (C) Francette Levieux/ Opéra national de Paris

Chorégraphes américain à l’Opéra de Paris
開催 9月25日まで
場所 Bibliothèque nationale de France / Bibliothèque-musée de l’Opéra Garnier
時間 10時〜17時(9月11日までは18時)
料金 11ユーロ(オペラ・ガルニエ訪問チケット料金に含まれている)