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三光 洋 Text by Hiroshi Sanko 
[2016.08.10]

バランシン風の美しさも垣間見せたフォーサイスの3作品、パリ・オペラ座バレエ団

Ballet de l’Opéra national de Paris パリ・オペラ座バレエ団
『Of any if and』(レパートリー入り)『Approximate Sonata』(振付改訂版)『Blake Works I』(世界初演)
William Forsythe ウイリアム・フォーサイス:振付

ガルニエ宮の夏休み前の公演はウイリアム・フォーサイス振付作品が三つ並んだ。
まずフォーサイスがバレエ監督を長く務めたフランクフルト・バレエ団のために1995年に振付けたデュオ作品『Of any if and』で始まった。肩から腰にかけてを最大限くねらせ、しなやかな身ごなしのレオノール・ボーラックと筋肉質のアドリアン・クヴェというコントラストの効いた二人によって、女と男とがお互いの差異を乗り越えて求めあう姿が、瞬間ごとに意外な展開を見せ、20分の上演時間の間、目を離すことができなかった。舞台後方に座った女性(フランクフルト初演で女性役を踊ったダナ・カスパーセン)が途切れ途切れに語り、そのキーワードが天井から下がってきた。この作品にあえて難を言うのならば、トム・ヴィレムスの音楽が変化にとぼしく、身体の動きが示した意外性に見合ったものではなかったことだろう

pari1608a01.jpg 「Of any if and 」(C) Opéra national de Paris/ Ann Ray pari1608a03.jpg 「Of any if and 」(C) Opéra national de Paris/ Ann Ray
pari1608a02.jpg 「Of any if and 」レオノール・ボーラック、アドリアン・クヴェ
(C) Opéra national de Paris/ Ann Ray

これに続いた『Approximate Sonata 』は、2006年2月にパリ・オペラ座のレパートリーに入った4組の男女のカップルが登場する作品だが、今回、振付にフォーサイスが新たに部分的に手を加えた。
アリス・ルナヴァンが登場し、最初のパを刻んだところでいったんストップして、再度元の位置に戻ってやり直す場面でスタートした。相手役のアドリアン・クヴェとリハーサルをしているようなリラックスした雰囲気で、ちょっと毛色の変わった作品に観客を引き込んだ。これに、フォーサイス作品を踊りこんでいるヴェテランのマリー=アニエス・ジロと、若々しい強靭さを感じさせたオードリック・ブザールの第2カップルが続き、次いでエレオノーラ・アバニャートとアレッシオ・カルボーネというイタリア人の組み合わせも息の合ったところを見せた。最後に登場したオニール 八菜は、ファビアン・レヴィヨンを相手に踊り、「繊細さと優美、的確さをかねそなえた演技。「プルミエール・ダンスーズの中で最も才能に恵まれている」(「コンセールクラシック」誌、ジャクリーヌ・チュイユー)と高い評価を得た。音楽は『Of any if and』と同じトム・ヴィレムスだったが、こちらはより出来が良く、単調な感じを受けることはなかった。

pari1608a04.jpg 「Approximate sonata」オニール、レヴィヨン
(C) Opéra national de Paris/ Ann Ray
pari1608a08.jpg 「Approximate sonata」アリス・ルナヴァン
(C) Opéra national de Paris/ Ann Ray
pari1608a05.jpg 「Approximate sonata」オニール、レヴィヨン
(C) Opéra national de Paris/ Ann Ray
pari1608a06.jpg 「Approximate sonata」アバニャート、カルボーネ
(C) Opéra national de Paris/ Ann Ray
pari1608a07.jpg 「Approximate sonata」(C) Opéra national de Paris/ Anne Ray
pari1608a09.jpg 「Blake Works I 」
(C) Opéra national de Paris/ Ann Ray

休憩後にいよいよ期待された新作『Blake Works I 』が上演された。英国の若手ポップ音楽の作曲家ジェームス・ブレイクのアルバム「The Color in Anything」から選ばれた7曲が流れ、いくつかの愛の場面が展開された。どのダンサーからも真剣な取り組みが感じられたが、7つの場面で最も印象に残ったのはレオノール・ボーラックとフランソワ・アリュが踊った 「Color in Anything」のデュオだった。その他のダンサーではユゴー・マルシャンが大柄な踊りでいつもながら存在感にあふれていたのと、リュドミラ・パリエロのきめ細やかな演技が際立っていた。予想外だったのは1990年代からパリではシャトレ歌劇場で見ることができたフォーサイスの作品に固有の激しさや意外性が影を潜め、ちょっとバランシンを思わせるような見た目に美しい動きが目立ったことだろう。現在バレエ界の大御所の一人フォーサイスだけに、よりインパクトの強い作品を期待したフランス人バレエ評論家からは「物足りない」という声も上がったが、彼としては傑出した作品ではないかもしれないにせよ、誰もが肩の力を抜いて楽しめる作品だと感じられた。
(2016年7月7日 ガルニエ宮)

pari1608a11.jpg パリエロ、ルーヴェ
(C) Opéra national de Paris/ Ann Ray
pari1608a13.jpg リュドミラ・パリエロ
(C) Opéra national de Paris/ Ann Ray
pari1608a16.jpg ボーラック、アリュ
(C) Opéra national de Paris/ Ann Ray
pari1608a10.jpg (C) Opéra national de Paris/ Ann Ray pari1608a12.jpg (C) Opéra national de Paris/ Ann Ray
pari1608a14.jpg (C) Opéra national de Paris/ Ann Ray pari1608a15.jpg (C) Opéra national de Paris/ Ann Ray

『Of any if and』(レパートリー入り)
振付 ウイリアム・フォーサイス
音楽 トム・ヴィレムス
装置・照明 ウイリアム・フォーサイス
衣装 ステファン・ギャロウェイ
テキスト ダナ・カスパーセン ウイリアム・フォーサイス
サウンド・エンジニア ニールス・ランツ
ダンサー レオノール・ボーラック、アドリアン・クヴェ
『Approximate Sonata』
振付 ウイリアム・フォーサイス
音楽 トム・ヴィレムス
衣装 ステファン・ギャロウェイ
照明 ウイリアム・フォーサイス
サウンド・エンジニア ニールス・ランツ
ダンサー アリス・ルナヴァン、アドリアン・クヴェ、マリー=アニエス・ジロ、オードリック・ブザール、エレオノーラ・アバニャート、アレッシオ・カルボーネ、オニール 八菜、ファビアン・レヴィヨン
『Blake Works I』
振付 ウイリアム・フォーサイス
音楽 ジェームス・ブレイク
衣装 ドロテ・マーグ、ウイリアム・フォーサイス
照明 タニア・リュール、ウイリアム・フォーサイス
サウンド・エンジニア ニールス・ランツ
ダンサー 
「Forest Fire」リュドミラ・パリエロ、レオノール・ボーラック、ロクサンヌ・ストヤノフ他
「Put that away」マリオン=ゴーチエ・ド・シャルナセ、カロリーヌ・オズモン、パブロ・ラガサ
「Color in anything」レオノール・ボーラック、フランソワ・アリュ
「I hope my life」リュドミラ・パリエロ、レオノール・ボーラック、ユゴー・マルシャン、ジェルマン・ルーヴェ、その他のダンサー全員
「Waves know shores」シルヴィア・サン=マルタン、シモン・ヴァラストロ、マクシム・トマ他
「Two men down」ユゴー・マルシャン、グレゴリー・ガイヤール、ジェルマン・ルーヴェ、ジェレミー=ルー・ケール、パブロ・ラガサ、ポール・マルク、マクシム・トマ、その他のダンサー全員
「Forever」リュドミラ・パリエロ、ジェルマン・ルーヴェ