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大村真理子(マダム・フィガロ・ジャポン パリ支局長)
Text by Mariko OMURA 
[2016.05.10]

オペラ座ダンサー・インタビュー:シモン・ル・ボルニュ

Simon Le Borgne シモン・ル・ボルニュ(期間限定契約 臨時団員)
パリ・オペラ座で4月、マギー・マランの『Les Applaudissement ne se mangent pas(拍手は食べられない)』の公演があった。舞台で1時間強踊り続ける8名のダンサーの一人に選ばれたシモン・ル・ボルニュ。まだオペラ座バレエ団の正式団員ではないが、この作品には欠かせない存在だった。

『Les Applaudissement ne se mangent pas(拍手は食べられない)』の配役を見て、ヴァンサン・シャイエやニコラ・ポールは知っているけれど、シモン・ル・ボルニュとはいったい誰だろうと思った人もいるのではないだろうか。2013年に開催されたフランス派バレエ300周年記念のパリ・オペラ座&バレエ学校ガラで、彼は『今から』を踊った生徒18名の一人である。目下のところ臨時団員だが、今年3月の『イオランタ/くるみ割り人形』の創作にも彼は参加している。正式団員のカドリーユのダンサー以上に振付家をひきつける20歳の若者だ。

pari1605c_06.jpg 「くるみ割り人形」エドゥアルド・ロック振付(右端)
photo Agathe Poupeney / Opéra national de Paris

Q :『Les Applaudissement ne se mangent pas(拍手は食べられない)』のオーディションはどのように行われたのですか。

A:この作品には第一配役と第二配役で合計16名のダンサーが必要だということで、ぼくを含めてオペラ座が選んだダンサーが30人くらい、オーディションに参加しました。まずはリズムのエクササイズから始まりました。8分音符、16分音符、32分音符・・・拍子にあわせて歩き、どんどん早くなって行き、それを今度は歩くのではなく走って、というようなことです。それを多く繰り返しました。というのも、これが作品のリズムのベースのようなものなので。次いで振付の中のフレーズをいくつかテストして・・こうした2時間半のオーディションの後で、ダンサーが選ばれました。

Q :その結果、第一配役に選ばれたのですね。

pari1605c_08.jpg photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

A:はい。マギー・マランが配役を決めたのだと思います。とても幸せな気分でした。それに第一配役というので、すごくうれしくて。オーディションの結果を知って、一刻もはやく彼女と仕事をしたい!とリハーサル開始が待ち遠しかったですね。

Q:オーディション前にこの作品はみたことがありましたか。

A:この作品は2002年にクリエートされたものなので、インターネットでビデオをみることができました。このスタイル、好きです・・というか、これを見たときに(アンヌ・テレザ・ドゥ)ケースマイケルの作品のようで、ちょっと驚きました。というのも、ぼくがそれ以前に見た彼女の仕事は『May B』。これを見た当時はまだ小さくて、それにコンテンポラリー作品というのを知らなかったこともあって、少々混乱してしまったんです。あまり好きだとは思えませんでした。でも、なんとなく記憶にやきついていて・・何かとても強いものを残したんですね。だから、彼女の『Les Applaudissement ne se mangent pas(拍手は食べられない)』を踊るのは、きっと興味深いことに違いないという思いがありました。チャレンジでしたけど、振付を学び、舞台で踊るまで一歩一歩前進してゆく仕事は、とても良い経験でした。振付家と一緒に仕事をするのはこれが初めてではないけれど、彼女との出会いはとても特殊なケースでした。合計8公演。ぼくたち第一配役は4回の公演とそしてゲネプロがありました。ちょっと短期間すぎて、あっという間に終わってしまったという感じがあります。

Q:1時間5分の作品中、舞台にずっと出ずっぱりでしたね。

A:はい、ノンストップでした。それもこの作品が好きな点の1つといえます。踊りながら、同時にずっと考え続ける1時間なんです。考えるというのは・・・この作品は時間的移動も、空間的移動も実に正確に組み立てられている作品です。ダンサーの一人一人にきっちりとした分担があり、他のダンサー、そして音楽とシンクロしているために常に確認している必要があったのです。どの瞬間、どこから舞台に出てゆくのかというような・・・。カーテンの裏側の何箇所かに、自分なりの想像の扉を各人が思い描いていました。集中という点、これまで踊った作品で習慣化されたのとは異なるものでした。別の注意を要する仕事だったんです。ダンスはクラシックのヴァリアションのように激しいものではないけれど、でも強度がどんどん上がって行き、激しさに到達します。回転し続けるモーターのような集中力をもって踊る1時間なんです。

pari1605c_01.jpg 「Les Applaudissement ne se mangent pas」
photo Laurent Philippe/ Opéra national de Paris

Q:ノンストップということは、エネルギーの配分に気をつける必要がありましたか。

A:いえ、この作品では、そうしたこととの戦いはありません。より疲れるほど、より集中してゆく・・作品の中で表現することの強さ、緊張をそうやって徐々に得てゆくことができるのです。身体的、頭脳的疲労によって、僕たちグループはごく自然に集中状態へと運ばれてゆきました。

Q:ドゥニ・マリオットの音楽はカウントが難しそうですね 。

A:この作品は音楽ではカウントはしないんです。マギーのアシスタントのエニオ・サマルコとのリハーサルでは、ずっとメトロノームを使って進めました。でも、この作品はミリメートル単位で決め込まれている作品なので、メトロノームの仕事を繰り返した結果、僕たちの動きがロボットのようにカチっとなりすぎてしまっていて・・・リハーサルの最後の週にマギーが戻ってきて、そのことをぼくたちに指摘しました。それからメトロノームを使わずに、自分の中に、そしてグループの中にリズムをキープする仕事をしたのだけど、これはとても難しかったですね。作品中に何箇所か音楽的な目印があって、メトロノームがないことによって生じる微妙なズレを、そこで調整できるようになっています。この音楽的目安と、そして他のダンサーがしていることに常に注意を向けていて得られる視覚の目安。この2つの目安に沿って、メトロノームで繰り返した仕事によって生じてしまったかちかちとした面を徐々に消し去ってゆき、最終的に自然な感じに見えるようにできました。

Q:ダンサーたちが舞台上ではいているのは、ダンス用の靴ではないように見えました。

A:はい。自前ではないですが、靴はダンス用のではなくごく普通の靴でした。こういった面でも、まったく新しい経験で、これは筋肉についてもいえることだったんですよ。これまで使ったことのない、クラシックとはまったく異なる筋肉が必要とされて・・・。ぼくの場合は、脚の腓骨周辺が筋肉痛を起こしました。普通の靴で踊ることに馴れるのにも時間が必要でした。でも、街着のコスチュームも普通の靴もごく自然なものなので、これで踊るのは好きでした。

pari1605c_02.jpg 「Les Applaudissement ne se mangent pas」
photo Laurent Philippe/ Opéra national de Paris

Q:各人衣装の色が異なりましたね。

A:ぼくはグリーンのシャツに明るい栗色のパンツでした。色でパーソナリティを表現していて・・観客にもわかりやすいですよね。オーディションで選ばれたのは、創作時のダンサーのパーソナリティに近い人をそれぞれ選んだのではないかという気がしています。各人、創作時のダンサー名で呼ばれていましたから。ぼくは、マルセロです。コーチとはそれほど詳しくは話す機会がなかったけれど、僕はこのグループの中で血気にはやる若者という役割りだったと理解しています。最後、作品はこの若い男性が舞台を締めくくります。少々ためらった後、空間を去って行く・・・この最後については少々悲観的に理解しました。ニコラ・ポールが腕を下ろして舞台を去る姿には、諦観がありますね。「仕方ない。他には方法がないんだ。解決策がないんだ・・・いつだってこうなのさ」という感じの。ぼくは作品の最後をこのように解釈しているんです。

Q:公演批評はあまり芳しいものではなかったようですが、ダンサーとしてどのような体験でしたか。

A:まず、この作品に取り組むことはとても実り多いことに違いないと思い、実際に公演が始まってみると、ノンストップで舞台にたち、グループ内のエネルギーに支えられていることが感じられて・・そして、お互いに交わす視線にこめられた緊張から来るとても力強いものがありました。これが作品の雰囲気をつくりあげていましたね。自分のためではなくグループとしての全力投球をした作品です。他のダンサーたちとの共生があり、つながりが密接でした。

Q:8名が緊密な関係のようですが、もし第一配役の誰かが怪我をしたら、その代わりに第二配役のダンサーが加わって踊るというのは難しいことだったでしょうね。

A:確かに。たとえ作品を知っているダンサーでも、自分のではないグループに入り込むのは複雑なことになっただろうと思います。例えば、ぼくのパートを第二配役で踊ったのはアントナン・モニエでした。もし彼が怪我をしたら、ぼくが彼の代わりに第二配役のグループに入ることになるのだけど、それは、きっとすごく難しいことだったろうと想像できます。周囲のダンサーが違うので視覚的目安が存在しないし、パ・ド・ドゥのパートナーも異なるわけだし・・・。

pari1605c_03.jpg 「Les Applaudissement ne se mangent pas」
photo Laurent Philippe/ Opéra national de Paris

Q:3月のオペラとバレエの合体公演『イオランタ/くるみ割り人形』のオーディションはどのようだったのですか。

A:この作品のコール・ド・バレエには特に本格的なオーディションはありませんでした。アルチュール・ピタもシェルカウイも、この作品のクリエーションに参加した全員と仕事をしています。エドゥワルド・ロックだけが彼が担当する振付部分に、参加者のその中からダンサーを選んでいます。でも、彼自身、選んだ全員を使うかどうかはわかってなかったんですよ。最初は彼も手探り状態でしたから。

Q:ロックの振付に慣れるのは簡単でしたか。


A:すごく特殊なんですね、彼の動きも仕事の仕方も。ハイ・スピードで1つの身振りが繰り返されのが彼の振付。最初に振りを学ぶのだけど、それはとても知的作業であって刺激的でした。そしてその習得時期が終わると、今度はそれを速いスピードで実行できるようにする仕事です。できるようになるまで、とにかく何度も何度も繰り返し実行して・・・。仕事を進めるうちに、どんどんと面白くなってゆきました。彼特有の美しさ。例えば髪を撫で付けるとか、腕をかきむしるというような日常的な動作が様式化されて・・・薬指も立ててよく使いますね。この繰り返しの動きに、観客は催眠術をかけられたような印象を得ることになります。とても刺激的で興味深い仕事でした。それに創作に選ばれて参加するということは、振付家とダンサーとの間にやりとりがあるので、すごく快適です。これは、とても気に入ってることなのです。

pari1605c_04.jpg pari1605c_05.jpg
「くるみ割り人形」エドゥアルド・ロック振付(パートナーはアリス・ルナヴァン)
photos Agathe Poupeney

Q:2013年に開催されたフランス派バレエ300年記念ガラでは、ベアトリス・マッサンとニコラ・ポールが創作した『今から』を踊っていますね。

A:ぼくはバレエ学校の最終学年である第一ディヴィジョンを二回やっていて、これは最初の年のときです。このとき初めて振付家との仕事を経験したんです。第一ディヴィジョンの二回目の年の学校公演では、ノイマイヤーの『ヨンダリング』を踊っています。この2つの経験はとても実り多いものでした。

Q:学校時代からクラシックより、コンテンポラリー作品に配されていたのですね。

A:はい。ぼく自身も、今、コンテンポラリーにどんどんと興味が向かっているんです。作品を経由して、より自由に自己表現ができるし・・。もちろんクラシック・バレエの仕事の厳格さを捨て去るつもりはないですよ。でも、クラシック作品の場合、例えば年末の『ラ・バヤデール』のときのように、臨時団員のぼくはコール・ド・バレエなので、コンテンポラリー作品のようには表現できません。『くるみ割り人形』『Les Applaudissement ne se mangent pas(拍手は食べられない)』で現存の振付家との仕事をすることを経験し、今、ぼくがすごく心を惹かれているのは振付家との出会い、彼らとのやりとりです。振付家の頭にあることをダンサーが身体と表現でそれを伝承する・・・この翻訳の仕事に興味があります。

pari1605c_07.jpg オペラ座バレエ学校の公演 2014年「ヨンダリング」(右)
photo Francette Levieux/ Opéra national de Paris

Q:ル・ボルニュという苗字からブルターニュ出身者と想像しますが、そこでダンスを始めたのですか。

A:両親はブルターニュ出身ですが、ぼくが生まれたのはブルターニュ地方ではなくナントからそう遠くないラ・ロッシュ・シュル・ヨンです。7歳の時にそこのコンセルヴァトワールでダンスを始めました。でも、ここはコンテンポラリーがメインだったんです。ぼくが習いたかったのはクラシック・バレエだったので、半年くらい個人レッスンを受けました。それからオペラ座のバレエ学校に8歳半のときに研修生で入ったんです。学校時代、『ラ・バヤデール』でオペラ座の舞台に初めて立ちました。だから、ソロル役を踊ることに憧れがあって・・・これはクラシック作品ですが、今でもその気持ちは変わりません。

Q:なぜクラシック・バレエだったのでしょうか。

A:プロではないけれど、母がずっとクラシック・バレエをやっていました。それを見ていて、気に入ったんですね。それにクラシック・バレエが厳格さや規律正しさを要求するということも好きだったです。日常の仕事の追求・・・動きのパーフェクションを追求するということは、やるほどに先へ先へと道ができていくので、これは一種の不可能な追求です。でもこれが面白いんですね。それに身体的努力をすること、グランソーやピルエットができるようになる陶酔感とか・・・。

Q:サミュエル・ミュレーズが主宰するグループ3em Etage(トロワジム・エタージュ)の公演に参加していますね。

A:はい、2014年12月の公演が最初でした。臨時団員になって3か月後のことですね。それ以来、定期的に参加しています。次は5月29日のジュネーヴでの公演『Désordres』。ぼくは、彼の初期に創作した『Me2』というデュオをタケル・コストと踊ります。このグループではコンテンポラリーだけでなく、例えばプティの『ノートルダム・ド・パリ』の中のカジモドとエスメラルダのパ・ド・ドゥを踊ったこともあります。身体を変形し、人物を解釈し・・表現するパーソナリティがあって、とても演劇的。興味を持って仕事ができました。コンテンポラリーはサミュエルの作品以外では、フォーサイスの『Limb ‘s Théorem』からの抜粋とか・・。演目を選ぶのはサミュエルだけど、彼は参加するダンサーのことをよく知っているので、何がダンサーが興味を持てる作品かをわかってるんです。もちろん、ぼくたちから何かを踊りたいというリクエストもできる環境ですよ。トロワジエム・エタージュというのは、ダンサーたちが個々の芸術的パーソナリティを培うことができる場所なんです。

pari1605c_09.jpg パリ・オペラ座バレエ学校ガラ 2013年「今から」のリハーサル写真
photo Francette Levieux/ Opéra national de Paris

Q:サミュエル・ミュレーズがあなたのダンサーのキャリアに果たす役割は大きいですか。

A:はい。昨シーズン、オペラ座とは期間限定の契約のぼくは代役ばかりだったので、自分の居場所がオペラ座であると感じられずにいたんです。そんなときに彼から表現の場を与えれて・・これが解放のきっかけとなりました 。ダンサーとして、表現者として彼はぼくを育ててくれました。それにサミュエルのグループのおかげで、公演にまつわるあらゆる面を知ることができます。例えば、彼は自分で照明もやります。それはぼくも興味をもってることなんですね。ダンスの技術や芸術性という面だけでなく、いかに生き生きとした公演をつくりあげることができるか、ということ。こうしたことへの興味がますます掻き立てられるんです。サミュエルとの仕事では、これもとても面白いこと。それにぼくは踊るだけでなはなく、振付にも興味を持っていて、トロワジエム・エタージュが主催したフランソワ・アリュの公演ですでにチャンスがあったのですが、クレマンス・グロスとのデュオをクリエートしました。創作には情熱を持っているので、今後も続けて行きたいですね。

Q:パリ20区の劇場での『Venus et Adonis (ヴィーナスとアドニス)』の公演情報に、あなたの名前をみかけました。

A:これは4月19日に予定されていましたが、残念なことに公演は中止されました。バロックの音楽家や歌い手とのコラボレーションで、ぼくは踊るだけでなく振付も担当。創作はかなり進んでいたのだけど、オペラ座から参加することになっていたダンサーが怪我をし、また音楽家との同調がみつけられず、状況が段々と複雑になってしまって最終的に中止ということに。公演のテーマはヴィーナスとアドニスだけど、ぼくの創作は特にストーリー性のあるものではなく、愛、若さ、愛の悲しみといったことを巡るものでした。ダンスの重要性をキープするためにバロック音楽だけにとらわれず、音楽とは独立してクリエートもしていました。公演中止はフラストレーションだけど、芸術的な面でぼくは進めることができ、また振付家として舞台構成もみつけることができたし・・・いつかは他でこの仕事を役立たせることができると思っています。

Q:好きな振付家は誰ですか。

A:イリ・キリアンとウィリアム・フォーサイスです。仕事はきついにちがいないだろうけど、彼らと仕事をしてみたい!と憧れています。今シーズンの最後にガルニエ宮でフォーサイスの公演があるのだけど、ぼくのオペラ座との契約は、同時にバスチーユで公演のあるバランシンの作品『ブラームス・シェーンベルグ・カルテット』の方なんです。

Q:オペラ座では不定期ですが、「ダンサー・コレオグラファー」という公演がありますね。

A:最後は3年位前だったでしょうか。もし次回があるなら、ぜひ参加したいですね。振付は芸術的な身体言語を発展させることが面白いと思っています。ぼくのは特殊なスタイルで、ネオクラシックではなくコンテンポラリー。といってもマギー・マランほどではないけれど(笑)。始めたての頃は誰か好きなコレオグファファーのインスピレーションは避けられないものですね。ぼくが過去に創った愛のデュオでは、ぼくが好きな振付家のヴィム・ヴァンデケイビュムス、あるいはケースマイケル・・・・といったベルギーのコンテンポラリーの影響があるかもしれません。フォルムをクリエートするためのフォルムというのではなく、まず最初にエネルギーがあって、という自然な面が好きです。ぼくが創作で興味を持っているのは、どのようなメッセージをこめられるかということです。動きの言語だけではなく、言葉やマイムも盛り込んでというように思っています。ぼくには双子の兄弟がいて、彼はこの4月からベルギーのアラン・プラテルのカンパニーで新しいクリエーションを踊っています。彼はぼくより4年くらい後からクラシック・バレエを始め、それからコンテンポラリーへ向かいました。ぼくは彼によってコンテンポラリー作品に導かれたという感じがあります。彼とはつい最近まで一緒に暮らしていたので、ダンスのことや仕事のことなど、よく話し合いました。それぞれ受けている影響が異なるので、彼と話すことで自分を豊かにすることができます。ぼくたちは道程も異なり、それぞれが別の世界を持っていて、でも、仲が良く、共通の場を持っていて・・・だから、二人でデュオを作ることを考えているんですよ。

pari1605c_10.jpg パリ・オペラ座バレエ学校ガラ 2013年「今から」のリハーサル写真
photo Francette Levieux/ Opéra national de Paris

Q:オペラ座以外のカンパニーに行こうとか、海外でやってみようといった気持ちを持ったことはありますか。

A:もちろんですよ。ぼくはカンパニーには入っていず、期間限定の契約団員なのですから、来シーズンはどこで?ということを考えないわけにはいきません。心はオペラ座にあっても、ヨーロッパの他のところで起きていることからも目を離さずにいます。将来誰かコレオグラファーのカンパニーに入団することもありえるかもしれません。一人のスタイルを深めるというのも興味深い仕事だと思います。だけど、すべてを投げ出して、そこに行きたいと思わせるコレオグラファイーはまだ現れず、今のところはオペラ座にアクセスがあるので・・・。オペラ座というのはレパートリーの広さという点で素晴らしく、振付家との出会いもあるし、それに劇場そのものも信じられないほどの素晴らしいところです。ここでの契約を得るには、毎年入団試験を受ける必要があるので、今年の7月も受けますよ。

Q:来シーズンのプログラムで踊れたらと願っている作品は何でしょうか。


A:開幕公演に、クリスタル・パイトのクリエーションがありますね。彼女が創ったソロをある研修に参加した時に選んだこともあって・・彼女のスタイルが好きなんです。

Q:来シーズンは日本ツアーもあります。オペラ座バレエ学校時代に来日はしていますか。

A:いえ、あいにくと。『スカラムーシュ』の訪日公演のときは配役される高学年でもなく低学年でもなくという中間の年齢だったので、パリ居残り組の一人でした。来年のオペラ座ツアーでは去年ガルニエで踊った『テーマとヴァリエーション』がプログラムされているので、ツアーに参加できたら!って夢見ています。ぼくの両親はフランス語の教師をしながら、日本に3年間住んでいたんですよ。姉は日本で生まれました。だから耳にすることがとても多い日本を、ぜひとも自分自身の目で見てみたいと思っています。